ほたる追ふこゑ馥郁と草の闇
いつまでも灯のともりたる盆の村
ほうたるの俄かに殖ゆる盆の村
手のひらに蛍の鼓動つつみけり
盆なれや見知らぬ縁者訪ね来し
ほたる追ふこゑ馥郁と草の闇
いつまでも灯のともりたる盆の村
ほうたるの俄かに殖ゆる盆の村
手のひらに蛍の鼓動つつみけり
盆なれや見知らぬ縁者訪ね来し
よいしょと立ち上がる
すうっと背中がかるくなって
爺ちゃ
婆ちゃがおぶさってくる
よみがえる
あのふわふわ
妻の背には父
ぼくの背中にはだあれ
ゆうぐれの草の道
細くすずしい風が
うなじを優しく
くすぐるものだから
ぼくは黙って
なんどもなんども
頷いてやる
向うから
お迎えのおさななじみ
ちょうちんの灯に
頬を染め
そっと会釈して
すれちがう
霊棚を飾りご先祖を迎えに行く。まだ誰も来ていない静かな墓地。水をやり線香をあげると背中にふわっと風を感じる。「さあ帰ろう」心の奥でつぶやくと、もういちど背中で風がわく。 妻がお供えのおはぎを丸めている。姫たちは線香の煙から逃れて二階の奥で大人しくしている。不思議に蝉の鳴かない盆の入りである。