ぼくは口笛で鶯の鳴き声を真似るのが上手。
朝湯に浸りながら(風呂は母屋の外にある)
通りの向うの藪と啼きくらべ。
はじめは怪訝な声で応えていたが
そのうち本気になってくる。
啼きながら徐々に近づいてくるのが判る。
正体がバレないようにぼくも本気だ。
幸い、風呂場は共鳴するので音色がとても艶っぽい。
ひとしきり啼き競ったあと、
急に黙してしまったので藪の奥に退散したかと思ったが
突然、今度は近くで烈しくさえずる。
ぼくも負けずにさえずる。
しばらく男同士の闘いがつづいたが、ひたと静かになる。
・・・どうだ、参ったか・・・
お互いの様子を探り合っている気持ちが
長い沈黙の間を流れている。
なぁ、この辺でドローにしようじゃないか。
湯のぼせしてきた。