水田に浮んだ月に誘われて
蛙が一斉に鳴きだした。
理由は解らないが例年よりはるかに
蛙の数が多いように思う。
村中、ものすごい合唱だ!
中には道の真ん中で朦朧とへたり込んでいるのもいる。
この世に出てはきたものの
未だ冬眠から覚めやらぬようだ。
出来るかぎり避けながら、車を走らせるが
それでもいくつかは轢かれてしまう。
ぼくにはいくつかのトラウマがあって
その一つに蛙が苦手。
小学生の理科の授業で蛙にいたずらして以来、
触れることができない。
あの肌のぬるぬるはなんとも気持ち悪い。
いつだったか、どこぞのスナックで
女将から蛙の串焼きを出され大いに慌てたことがあった。
蛙など、あれは蛇の好物であって人間の食すものではない。
遠くからその音色を聞いているだけでいい。
書き出しにとまどひゐたり遠蛙 やす