ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

栗と英国紳士

2008-09-07 23:42:33 | 日記・エッセイ・コラム

農産物直売所にて初ものの栗を買う。
生栗はたちまち虫がわくので、早速茹でていただく。

熱々の皮を剥きながら
ふと、ロンドン名物の焼栗が想い出された。
もう30年も昔のこと。
計画ではジュネーブからバルセロナに向かう筈だったが
空港の管制塔がストライキに入り
急遽、ロンドンに廻されてしまった。
 (フラメンコが目的でこのツアーに参加したのに・・・)

曇り空の下、丸一日自由行動。
往来で買った焼栗がコートのポケットで温もり
ふうふう食べながら散策するぼくに
暗がりの中から一人の紳士が近づいてきた。
確か、ヒルトンホテルの角だったように覚えている。
黒のソフト帽に黒のスーツ・・・・・
まさに映画に出てくる英国紳士である。
ぼくの前にひたと立ち止まり、ギーミーサーペイ
英語のダメなぼくは、ワンスモア と訊きかえす。
紳士はゆっくり ギブ・ミー・サム・ペニイ と発音した。

総てを理解したぼくは、
断られた際の紳士の様子に興味がわいて
 ノー! と意地悪をしてみた。
そのまま何事もなかったように紳士はぼくの前から立ち去っていった。
もし、誰かがその場を見ていたら
貧相な東洋人のぼくの方が
お金をせびっているように見えたかもしれない。

カツカツと靴音が闇に響き
11月も半ばの寒い季節であった。

   
ままごとに不倫の兆し鳳仙花