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きみはダックス先生がきらいか/灰谷健次郎

2007年09月26日 21時42分21秒 | 読書歴
■きみはダックス先生がきらいか/灰谷健次郎
■ストーリ
 4年生になったリツコは、新学期そうそうがっくり。
 一番担任になってほしくないと思っていたダックス先生が担任に
 なったのだ。短足で背が低く、ぼけっとしていてノロマで
 トウニョウビョウで、ちっともスマートじゃない。おまけに
 一般常識とやらが欠落しているみたい。
 でも、ちっとも先生らしくないダックス先生に、リツコたちは
 次第にひかれていく。

■感想 ☆☆☆☆☆
 1981年刊行のこの童話、26年も前の作品だというのに
 今読んでもまったく古臭くない。子どもが抱えている問題は
 今と本質的に変わっていない。リツコは毎日毎日、塾に通い
 成績をあげるように、いい子でいるように親からうるさく
 言われている。尤も、抱えている問題は本質的な変化を遂げては
 いないが、それでもやはり現代はより深刻化、複雑化している
 とは思う。

 この本の中では、まだ子どもたちはとても素直だ。
 ちっとも教師らしくないダックス先生が実践する「教育」は
 ごくごく当たり前のこと。音楽コンクールの練習時に子どもたちに
 与える注意は、音楽の授業のようであって、それを超えた
 何かを感じさせる。
 「歌の歌詞を考えて歌いなさい。」
 「綺麗な声で歌おうとする必要はない。
  みんなの声をよく聴いて歌いなさい。」
 「みんなの心をあわせなさい。」
 それ以外の技術的な指導はまったく行わない。そして、知的障害を
 抱える児童にも同じ場を共有させ、彼女には「立つこと」「参加
 すること」を課題として与える。

 クライマックスの音楽コンクールで児童たちが自分たちで考え
 行動する様子には目頭を熱くさせられた。こういった「心を
 育てる教育」が子どもには必要なのだと思う。

 この作品のダックス先生にはモデルがいる。
 「1年1組 先生あのね」を編纂した鹿島先生だ。
 なるほど、と思った。こんなふうに子どもたちと寄り添ったから
 ああいう子どもたちの飾らない言葉を引き出すことができたのだ。


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