■風立ちぬ/2013年日本
■原作・脚本・監督:宮崎駿
■声の出演
庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート
風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
■感想 ☆☆☆☆
見終えてすぐは自分の感情をうまく掴まえることができませんでした。
自分がいったい、何にひっかかっているのか、何がこんなに痛いのか、よくわからない。
そんなもやもやした気持ちと、でも確実に「きつい」「辛い」と思う気持ち。
そんなざわざわした感情で心がいっぱいになる映画でした。
自分の感情を捕まえるのにこんなに時間がかかるとは思わなかったなぁ。
何度も何度も思い返して、思い返して、思い返して。
ようやく、私はきっと「主人公の抱える矛盾」に胸がざわついてるんだろうな、
というところまでたどりつきました。その矛盾が自分の抱えている矛盾と重なって見えて
だからあんなにもひりひりとした気持ちになったんだろうな、と思い至りました。
主人公は純粋に「飛行機を作りたい」「早い飛行機を作りたい」と願い
その夢に向かって懸命に努力をしてきた人で。それが結果として戦争に使われてしまったけれど、
それは時局が悪かったから、なのか。
そんな言葉で簡単に片付けられるものなのか。片付けていいものなのか。
それとも主人公は自分の「夢」を守ろうと、毅然として権威に立ち向かうべきだったのか。
そこから私は何も自分の思いを見つけられませんでした。
「兵器を作ろう」としているわけではない主人公の作った飛行機。
その飛行機で失われた多くの命。
行ったまま戻ってこなかった飛行機。
飛行機の中で笑う兵士たち。
「夢の世界」を「地獄かと思いました。」と言う主人公。
「この10年頑張ってきたか。」と問われ、清々しく「はい。」と答える主人公。
けれど「最後はボロボロでしたが。」と続ける主人公。
どれも見ていて辛い、きつい場面でした。
なおかつ、主人公は何度やり直せたとしても
きっと同じ道を選んだんじゃないかな、と思えるところ。
それが一番きつかったのかもしれません。
戦争で自分が設計した飛行機が多くの命を乗せ、帰ってこなかった風景を見て
ずたずたに傷ついているけれど、でも「飛行機を設計したい」という夢はきっと捨てられない。
その夢は本来諦める必要なんてまったくない夢のはずで。
そんなことを考えながら見ていると、胸がぐるぐると苦しくなりました。
中盤、ドイツ人カストルプが言います。
「ここは忘れるのにいい場所ね。日中戦争、忘れる。満州、忘れる。戦争、忘れる。」
それはきっと今の私にも十分に当てはまる指摘で
だから、この指摘が耳から離れないんだろうな、と思いました。
ヒロインは宮崎映画史上、最も儚げで華奢で美しい女性でした。
何度、見とれたことか。
仕事、そして夢をひたすらに追い求める主人公が
それでも彼女を愛し、彼女とともに暮らす時間を必死で作り出す姿も
「このヒロインならね。」と納得できるものでした。
喀血したヒロイン、奈緒子の元へ懸命に駆けつけ、抱きしめる主人公は
「朴訥」とした風情の主人公からは思いもよらない情熱で
ふたりにとって「運命の恋」だったことが伝わってくる場面だったし、
だからこそ、ふたりが命を削って、共に過ごそうとする展開も納得できました。
お互いに懸命に寄り添いあい、求め合う姿は美しく、羨ましいと思いました。
そして、そんな二人を温かく見守る主人公の上司、黒川夫妻と主人公の妹、加世。
加世のまっすぐ伸ばした背筋とまっすぐな感情が大好きでした。
感じたままに怒り、泣きじゃくる加世の姿は私の最も憧れる姿で、
こんなふうに周囲の人を大切に思える女性になりたいな、と思いました。
「生きて」と願うヒロインと
「生きねばならない。」と静かに言い聞かせる同志の存在。
私たちは、もとい、私は。「生きねばならない。」
自分の抱える矛盾と向き合って。
自分のしてきたこと、過去を乗り越えて。
思い通りにならなくても、明日を。と、思いました。
見終えて二週間経ちますが、まだもやもやしています。
まだ、自分の感情をうまく整理できていません。そんな映画でした。
■原作・脚本・監督:宮崎駿
■声の出演
庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート
風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
■感想 ☆☆☆☆
見終えてすぐは自分の感情をうまく掴まえることができませんでした。
自分がいったい、何にひっかかっているのか、何がこんなに痛いのか、よくわからない。
そんなもやもやした気持ちと、でも確実に「きつい」「辛い」と思う気持ち。
そんなざわざわした感情で心がいっぱいになる映画でした。
自分の感情を捕まえるのにこんなに時間がかかるとは思わなかったなぁ。
何度も何度も思い返して、思い返して、思い返して。
ようやく、私はきっと「主人公の抱える矛盾」に胸がざわついてるんだろうな、
というところまでたどりつきました。その矛盾が自分の抱えている矛盾と重なって見えて
だからあんなにもひりひりとした気持ちになったんだろうな、と思い至りました。
主人公は純粋に「飛行機を作りたい」「早い飛行機を作りたい」と願い
その夢に向かって懸命に努力をしてきた人で。それが結果として戦争に使われてしまったけれど、
それは時局が悪かったから、なのか。
そんな言葉で簡単に片付けられるものなのか。片付けていいものなのか。
それとも主人公は自分の「夢」を守ろうと、毅然として権威に立ち向かうべきだったのか。
そこから私は何も自分の思いを見つけられませんでした。
「兵器を作ろう」としているわけではない主人公の作った飛行機。
その飛行機で失われた多くの命。
行ったまま戻ってこなかった飛行機。
飛行機の中で笑う兵士たち。
「夢の世界」を「地獄かと思いました。」と言う主人公。
「この10年頑張ってきたか。」と問われ、清々しく「はい。」と答える主人公。
けれど「最後はボロボロでしたが。」と続ける主人公。
どれも見ていて辛い、きつい場面でした。
なおかつ、主人公は何度やり直せたとしても
きっと同じ道を選んだんじゃないかな、と思えるところ。
それが一番きつかったのかもしれません。
戦争で自分が設計した飛行機が多くの命を乗せ、帰ってこなかった風景を見て
ずたずたに傷ついているけれど、でも「飛行機を設計したい」という夢はきっと捨てられない。
その夢は本来諦める必要なんてまったくない夢のはずで。
そんなことを考えながら見ていると、胸がぐるぐると苦しくなりました。
中盤、ドイツ人カストルプが言います。
「ここは忘れるのにいい場所ね。日中戦争、忘れる。満州、忘れる。戦争、忘れる。」
それはきっと今の私にも十分に当てはまる指摘で
だから、この指摘が耳から離れないんだろうな、と思いました。
ヒロインは宮崎映画史上、最も儚げで華奢で美しい女性でした。
何度、見とれたことか。
仕事、そして夢をひたすらに追い求める主人公が
それでも彼女を愛し、彼女とともに暮らす時間を必死で作り出す姿も
「このヒロインならね。」と納得できるものでした。
喀血したヒロイン、奈緒子の元へ懸命に駆けつけ、抱きしめる主人公は
「朴訥」とした風情の主人公からは思いもよらない情熱で
ふたりにとって「運命の恋」だったことが伝わってくる場面だったし、
だからこそ、ふたりが命を削って、共に過ごそうとする展開も納得できました。
お互いに懸命に寄り添いあい、求め合う姿は美しく、羨ましいと思いました。
そして、そんな二人を温かく見守る主人公の上司、黒川夫妻と主人公の妹、加世。
加世のまっすぐ伸ばした背筋とまっすぐな感情が大好きでした。
感じたままに怒り、泣きじゃくる加世の姿は私の最も憧れる姿で、
こんなふうに周囲の人を大切に思える女性になりたいな、と思いました。
「生きて」と願うヒロインと
「生きねばならない。」と静かに言い聞かせる同志の存在。
私たちは、もとい、私は。「生きねばならない。」
自分の抱える矛盾と向き合って。
自分のしてきたこと、過去を乗り越えて。
思い通りにならなくても、明日を。と、思いました。
見終えて二週間経ちますが、まだもやもやしています。
まだ、自分の感情をうまく整理できていません。そんな映画でした。