■ドラマ:トットチャンネル
■土曜20時15分NHK
■感想 ☆☆☆☆☆
30分×7回=210分。
3時間半のこのドラマに喜怒哀楽(の怒以外)の感情をすべて揺さぶられました。何回泣かされたか分かりません。祝福と喜び、孤独と切なさがたくさん詰まった密度の濃いドラマでした。そして、長生きをすることの喜びや切なさ、寂寥感を追体験できたドラマでした。
テレビの黄金期を祝祭的な雰囲気で描き出した前半4回とテレビの黄金期を共に支え続けた仲間たちとの別れを淡々と描いた後半3回。まったくテイストは異なるけれど、どちらも湿っぽくなく、説明しすぎることなく、行間を大事に描いてくれていて、画面から伝わってくる喜び、おかしみ、哀しみ、孤独に涙腺を刺激されっぱなしの2か月でした。なんでもスタッフはほとんど「あまちゃん」制作陣なんだそうです。道理で感情の押し付けがまったくない展開だったはずだ!と納得しました。
テレビ草創期の「面白いテレビを作ってやるんだ!」という熱量の大きさと、その熱量に技術がまったく追いついていないドタバタした毎日、そして、その伴っていない技術を出演者とスタッフが一致団結してカバーしていく一体感。「もっともっと面白いテレビが作れるはず。作ってやる。」という気概を持ちながらも、気負いすぎずにただただ無邪気に「テレビ」というものを楽しむスタッフと出演者たち。みんながテレビを作るためにドタバタしていて、でもそのドタバタを心から楽しんでいる。それらすべてが羨ましいぐらいに幸せそうでした。テレビ草創期を彩ってきたスターたちも、セリフを覚えられなかったり、そもそもセリフを覚える気すらなかったり、忙し過ぎて生放送中に寝てしまったり、決して演技が上手というわけではなかったり、どこか欠陥がある困ったところのある人たちばかりで、でも、その「困ったところ」を「欠陥」として咎めるのではなく、文句を言いつつも、その人たちの個性、その人ならではの「味わい」として周囲がまるごとおおらかに受け止めていて、見ている私まで幸せな気持ちにさせてもらえました。無邪気に明日を信じるスターたちの笑顔で胸がいっぱいになりました。
勿論、「あの頃はよかった」だけではすまされない問題もたくさんあったわけだし、今には今の良さがちゃんとある、今の方が良いところもたくさんたくさんある!とも思うのだけれど、でも、やっぱりあのおおらかな時代の空気はどこまでも羨ましいものでした。そして、私たちはどこかで便利さとか技術の向上と引き換えに何か大切なものを失ってしまったんじゃないのかな、と思わずにいられませんでした。
後半3回はテレビの黄金期を支えた向田邦子さん、渥美清さん、森繁久弥さんとのお別れにフォーカスを絞り込むことで、「戦後」という華やかで右肩上がりに生活が良くなっていくと信じられた時代の終焉も描いてくれていたように思います。30分という短い時間の中に彼らとの幸せな思い出をぎゅっと濃縮させて描き出し、一方で彼らとの別れを直接的な映像表現ではなく、行間にしまいこんでみせる演出に泣かされっぱなしでした。
3人それぞれがトットちゃんと信頼し合い、尊敬しあい、親愛の情を抱き続けた「家族のように特別な仲」だったにも関わらず、互いに寄りかからず、もたれ合わず、でも全てをさらけ出すことはせず、適度な距離を保ち続けて誇り高く生きていて、その関係の潔さと気品にも時代を感じました。長生きをするということは孤独と向き合う時間が増えるということ、果たせない約束が増えるということ、大好きな人たちとの別れをしっかり受け止めるということなんだな、と改めて実感させられたドラマでした。
いつも明るく無邪気で、そしてどこまでも鈍感なトットちゃんが大好きな人たち、尊敬する人たちの死をじっと受け止める姿、涙を流すことなく「泣いてたまるもんか」「おもしろいおばあちゃんになってやる」と決意する姿に胸がいっぱいになりました。
また、老いて難しいことを考えたり喋ったりすることが面倒になった森繁さんの歌う「知床旅情」にトットちゃんや王さんが感情を揺さぶられる姿に「時代を超えて歌い継がれてきた歌」「多くの人に愛された歌」の持つ力の大きさを見た気がします。よぼよぼになって、老人ホーム仲間の輪の中に入ろうとしなかった王さんが森繁さんがささやくように歌う「知床旅情」を喜び、みんなと共に大声で歌いだす場面も、今まで大切な人たちを亡くしても決して泣かずにじっと目を見開いてこらえていたトットちゃんがくしゃくしゃに泣き出す場面も、どちらも森繁さんの魅力をそっと表していて素敵でした。
ラストは亡くなった人たちも全員再登場で、みんなで歌う「はじまりのうた」。
「昔はよかった」ではなく、「これから」を信じて、「明日」を信じて笑顔で歌う3人のトットちゃんの姿に泣きながら元気をもらいました。本当に本当に素敵なドラマでした。何度思い返しても胸がいっぱいになる。そんな幸せなドラマでした。
■土曜20時15分NHK
■感想 ☆☆☆☆☆
30分×7回=210分。
3時間半のこのドラマに喜怒哀楽(の怒以外)の感情をすべて揺さぶられました。何回泣かされたか分かりません。祝福と喜び、孤独と切なさがたくさん詰まった密度の濃いドラマでした。そして、長生きをすることの喜びや切なさ、寂寥感を追体験できたドラマでした。
テレビの黄金期を祝祭的な雰囲気で描き出した前半4回とテレビの黄金期を共に支え続けた仲間たちとの別れを淡々と描いた後半3回。まったくテイストは異なるけれど、どちらも湿っぽくなく、説明しすぎることなく、行間を大事に描いてくれていて、画面から伝わってくる喜び、おかしみ、哀しみ、孤独に涙腺を刺激されっぱなしの2か月でした。なんでもスタッフはほとんど「あまちゃん」制作陣なんだそうです。道理で感情の押し付けがまったくない展開だったはずだ!と納得しました。
テレビ草創期の「面白いテレビを作ってやるんだ!」という熱量の大きさと、その熱量に技術がまったく追いついていないドタバタした毎日、そして、その伴っていない技術を出演者とスタッフが一致団結してカバーしていく一体感。「もっともっと面白いテレビが作れるはず。作ってやる。」という気概を持ちながらも、気負いすぎずにただただ無邪気に「テレビ」というものを楽しむスタッフと出演者たち。みんながテレビを作るためにドタバタしていて、でもそのドタバタを心から楽しんでいる。それらすべてが羨ましいぐらいに幸せそうでした。テレビ草創期を彩ってきたスターたちも、セリフを覚えられなかったり、そもそもセリフを覚える気すらなかったり、忙し過ぎて生放送中に寝てしまったり、決して演技が上手というわけではなかったり、どこか欠陥がある困ったところのある人たちばかりで、でも、その「困ったところ」を「欠陥」として咎めるのではなく、文句を言いつつも、その人たちの個性、その人ならではの「味わい」として周囲がまるごとおおらかに受け止めていて、見ている私まで幸せな気持ちにさせてもらえました。無邪気に明日を信じるスターたちの笑顔で胸がいっぱいになりました。
勿論、「あの頃はよかった」だけではすまされない問題もたくさんあったわけだし、今には今の良さがちゃんとある、今の方が良いところもたくさんたくさんある!とも思うのだけれど、でも、やっぱりあのおおらかな時代の空気はどこまでも羨ましいものでした。そして、私たちはどこかで便利さとか技術の向上と引き換えに何か大切なものを失ってしまったんじゃないのかな、と思わずにいられませんでした。
後半3回はテレビの黄金期を支えた向田邦子さん、渥美清さん、森繁久弥さんとのお別れにフォーカスを絞り込むことで、「戦後」という華やかで右肩上がりに生活が良くなっていくと信じられた時代の終焉も描いてくれていたように思います。30分という短い時間の中に彼らとの幸せな思い出をぎゅっと濃縮させて描き出し、一方で彼らとの別れを直接的な映像表現ではなく、行間にしまいこんでみせる演出に泣かされっぱなしでした。
3人それぞれがトットちゃんと信頼し合い、尊敬しあい、親愛の情を抱き続けた「家族のように特別な仲」だったにも関わらず、互いに寄りかからず、もたれ合わず、でも全てをさらけ出すことはせず、適度な距離を保ち続けて誇り高く生きていて、その関係の潔さと気品にも時代を感じました。長生きをするということは孤独と向き合う時間が増えるということ、果たせない約束が増えるということ、大好きな人たちとの別れをしっかり受け止めるということなんだな、と改めて実感させられたドラマでした。
いつも明るく無邪気で、そしてどこまでも鈍感なトットちゃんが大好きな人たち、尊敬する人たちの死をじっと受け止める姿、涙を流すことなく「泣いてたまるもんか」「おもしろいおばあちゃんになってやる」と決意する姿に胸がいっぱいになりました。
また、老いて難しいことを考えたり喋ったりすることが面倒になった森繁さんの歌う「知床旅情」にトットちゃんや王さんが感情を揺さぶられる姿に「時代を超えて歌い継がれてきた歌」「多くの人に愛された歌」の持つ力の大きさを見た気がします。よぼよぼになって、老人ホーム仲間の輪の中に入ろうとしなかった王さんが森繁さんがささやくように歌う「知床旅情」を喜び、みんなと共に大声で歌いだす場面も、今まで大切な人たちを亡くしても決して泣かずにじっと目を見開いてこらえていたトットちゃんがくしゃくしゃに泣き出す場面も、どちらも森繁さんの魅力をそっと表していて素敵でした。
ラストは亡くなった人たちも全員再登場で、みんなで歌う「はじまりのうた」。
「昔はよかった」ではなく、「これから」を信じて、「明日」を信じて笑顔で歌う3人のトットちゃんの姿に泣きながら元気をもらいました。本当に本当に素敵なドラマでした。何度思い返しても胸がいっぱいになる。そんな幸せなドラマでした。