■ストーリ
写真家の猛(オダギリジョー)は、母の一周忌で帰郷した。
父(伊武雅刀)と折り合いの悪い彼だが、
温和な兄・稔(香川輝之)とは良好な関係を保っている。
翌日、猛は稔、そして幼馴染の智恵子(真木よう子)と
渓谷へと向かった。
智恵子が見せる「一緒に東京へ行きたい」という態度を
はぐらかして、一人で自然へカメラを向ける猛。そんな彼が
ふと吊橋を見上げた時、橋の上にもめている様子の稔と智恵子がいた。
そして次の瞬間、そこには谷底へ落ちた智恵子に
混乱する稔の姿だけがあった。
■感想 ☆☆☆☆☆
2週間ほど前に見た映画。
見終わった後にずっしりときすぎて、感想が書けずにいた。
兄と弟の間に存在する深い溝。
そこに架けられた一本の橋の上で揺れ続ける兄弟の絆。
二転三転する人の記憶。印象。
私は妹に対して、長年、コンプレックスを抱き続けている。
人当たりのよい妹。意志が強い妹。家族に対しても感情を
爆発させない妹。妹のことは好きだし、仲の良いほうだとも思う。
けれども、確かに存在するコンプレックス。
だから、私は兄の立場に立ってこの映画を見てしまった。
女性にモテるかっこいい弟。
東京でカメラマンとして成功している弟。
それに対して、ちっぽけなガソリンスタンドを継いで、
いちゃもんをつける客にぺこぺこと頭を下げている自分。
女性にもてるほうでもなく、縁もない自分。
老いた父の面倒を見て、炊事、洗濯、掃除をこなす自分。
弟は自分に懐いてくれている。自分も弟のことを理解している。
大好きな兄弟。なのに、ふと感じる虚無。嫉妬。
その上、思いを寄せている幼馴染の女性も戻ってきた弟に
とられてしまう。不公平な人生。不公平な運命。
いつも笑顔で「いい人」の兄が見せる激昂は怖くて切なくて哀しい。
激昂する兄を更に嫌がる幼馴染の女性の気持ちは理解できる。
まだ、決まった間柄でもないのに、あからさまに見せられる
嫉妬は醜い。将来に対して、現実に対して閉塞感を感じている
彼女が「田舎」の見本のような兄に瞬間的に嫌悪感を抱き
「都会」の象徴のような弟に助けを求めるのも分かる。
しかし、拒絶された兄の心の痛みや闇は更に深まる。
事件が起こった後、自白した兄は面会に来た弟に対して
つばを吐く。鬼のような形相で悪態をつく。
長年のコンプレックスが表面に現れ、弟も兄も傷つく。
兄弟なのに。一番身近な存在なのに。
一方、弟は弟で自分が好き勝手することができるのも
兄が多くのことを我慢しているからだという負い目がある。
そして、兄が好きな女性と寝てしまったという罪悪感も。
その負い目によって、兄を助けようと奔走する。
しかし、徐々に兄に対する印象も自分の感情も
分からなくなってくる。その混沌とした感情が記憶にも影響する。
見たはずなのに思い出せない。
事件によって、二人の関係は破綻したかに見える。
けれども、ラスト場面はどこか爽やかで希望を感じる。
他人の考えることは分からない。たとえ兄弟でも。
けれども、家族には、そして人と人との間には絆が確かにある。
そう思える映画だった。
写真家の猛(オダギリジョー)は、母の一周忌で帰郷した。
父(伊武雅刀)と折り合いの悪い彼だが、
温和な兄・稔(香川輝之)とは良好な関係を保っている。
翌日、猛は稔、そして幼馴染の智恵子(真木よう子)と
渓谷へと向かった。
智恵子が見せる「一緒に東京へ行きたい」という態度を
はぐらかして、一人で自然へカメラを向ける猛。そんな彼が
ふと吊橋を見上げた時、橋の上にもめている様子の稔と智恵子がいた。
そして次の瞬間、そこには谷底へ落ちた智恵子に
混乱する稔の姿だけがあった。
■感想 ☆☆☆☆☆
2週間ほど前に見た映画。
見終わった後にずっしりときすぎて、感想が書けずにいた。
兄と弟の間に存在する深い溝。
そこに架けられた一本の橋の上で揺れ続ける兄弟の絆。
二転三転する人の記憶。印象。
私は妹に対して、長年、コンプレックスを抱き続けている。
人当たりのよい妹。意志が強い妹。家族に対しても感情を
爆発させない妹。妹のことは好きだし、仲の良いほうだとも思う。
けれども、確かに存在するコンプレックス。
だから、私は兄の立場に立ってこの映画を見てしまった。
女性にモテるかっこいい弟。
東京でカメラマンとして成功している弟。
それに対して、ちっぽけなガソリンスタンドを継いで、
いちゃもんをつける客にぺこぺこと頭を下げている自分。
女性にもてるほうでもなく、縁もない自分。
老いた父の面倒を見て、炊事、洗濯、掃除をこなす自分。
弟は自分に懐いてくれている。自分も弟のことを理解している。
大好きな兄弟。なのに、ふと感じる虚無。嫉妬。
その上、思いを寄せている幼馴染の女性も戻ってきた弟に
とられてしまう。不公平な人生。不公平な運命。
いつも笑顔で「いい人」の兄が見せる激昂は怖くて切なくて哀しい。
激昂する兄を更に嫌がる幼馴染の女性の気持ちは理解できる。
まだ、決まった間柄でもないのに、あからさまに見せられる
嫉妬は醜い。将来に対して、現実に対して閉塞感を感じている
彼女が「田舎」の見本のような兄に瞬間的に嫌悪感を抱き
「都会」の象徴のような弟に助けを求めるのも分かる。
しかし、拒絶された兄の心の痛みや闇は更に深まる。
事件が起こった後、自白した兄は面会に来た弟に対して
つばを吐く。鬼のような形相で悪態をつく。
長年のコンプレックスが表面に現れ、弟も兄も傷つく。
兄弟なのに。一番身近な存在なのに。
一方、弟は弟で自分が好き勝手することができるのも
兄が多くのことを我慢しているからだという負い目がある。
そして、兄が好きな女性と寝てしまったという罪悪感も。
その負い目によって、兄を助けようと奔走する。
しかし、徐々に兄に対する印象も自分の感情も
分からなくなってくる。その混沌とした感情が記憶にも影響する。
見たはずなのに思い出せない。
事件によって、二人の関係は破綻したかに見える。
けれども、ラスト場面はどこか爽やかで希望を感じる。
他人の考えることは分からない。たとえ兄弟でも。
けれども、家族には、そして人と人との間には絆が確かにある。
そう思える映画だった。