裂かれたかのような国家。これは本当の今のアメリカナンだろうか？
そんな体現をする3人の警官の物語。
3つのストーリーが一つの映画になっているが、別にしてもいけるし、どこか「パリジュテーム」や「ニューヨークアイラブユー」に似ているところもアル。
でももっと話はシリアスだ。
この映画「クロッシング」の原題は「Brooklyn’s Finest」という。
意味は、「ブルックリンの警察官」。
主人公の３人はニューヨークの中で最も低所得者層が多い犯罪多発地域の署に所属する3人の警官たち。
目立った功績もなく、同僚からは冷たい視線を浴びている引退間近のベテラン警官。
長年ギャングと交わり、私生活を犠牲にしてきた潜入捜査官。
そして、双子を妊娠中の妻と5人の子供を抱え、経済的に苦しい生活を強いられている麻薬捜査官。
3人はそれぞれに行き場のない苦悩を抱えながら、なんとか厳しい現実を生きている。
そんな3人の姿を見ていると、まるで今の本当のアメリカはこうなんだっと言う感覚になる。
もう用済み、身も心もボロボロ、家計は火の車。
夢も希望もない真っ暗の世の中で、目的もなく、個々がバラバラに現状からの脱出をはかっている。
この映画も3人に共通の事件が起こるかというと、そんなこともなく、ただ一瞬、交錯（クロッシング）するだけだ。
“United we stand, divided we fall.（団結すれば立てるが、分裂すれば倒れる）”という標語があるが、本作はまさに、分裂した今のアメリカを象徴する映画といえるだろう。
しかし脚本が絶妙だった。
長い映画ではあるけれど見ごたえがある、そんな感じ。