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40代後半になったデップが今回演じるのは、1960年の中米プエルトリコに流れついた新進ジャーナリスト、ポール・ケンプ。「まだ文体が見つからない」と嘆く彼は、ラム酒を浴びるように飲む島の生活に馴染みながら、精神的かつ肉体的な旅路を体験するのだが、物書きとしてのビルドゥングス・ロマン的な成長の物語としては多少無理があるかもしれない。「ペンは剣よりも強し」的な結末も、最後まで“ほのめかす”程度なのだ。だが、時計の針を逆回ししたかのようなデップの快演が物語の説得性をもたせている。また、往年のフィルム・ノワールから抜け出たようなミステリアスな美女を演じるアンバー・ハードが彼とのラブロマンスに華を添えていて、目を釘付けにする。
デップが最も好きな映画のひとつと公言する酒とドラッグの日々を描いた青春映画「ウィズネイルと僕」を手がけた監督・脚本のブルース・ロビンソンは、このカリブ海に浮かぶ楽園が見せる原色に満ちた美しい情景と、苦渋に満ちたドス黒い貧困の現実の両極を、鮮やかにコントラストさせている。エアコンのない新聞社屋、新聞紙のインク、純度の高いラム酒、汗ばんだ闘鶏場、メンソールタバコの煙……。どんよりとした色彩の、すえた匂いのするような画面(撮影はダリウス・ウォルスキー)の中に、海岸線を疾走するシボレー・コルベットや、魅惑の美女の口紅の赤色が紛れ込んでいる感じが、たまらなく扇情的だ。
2005年に自殺したアメリカのジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンの自伝的小説を映画化。1960年代のプエルトリコで、弱小新聞に執筆する酔いどれフリージャーナリストのポール・ケンプの破天荒な人生を描く。トンプソン原作の「ラスベガスをやっつけろ」にも主演したジョニー・デップが製作・主演。ニューヨークの喧騒に疲れたジャーナリストのポール・ケンプは、自然に囲まれたプエルトリコにやってくる。個性豊かな仲間と毎日ラム酒をあおる生活にすっかりなじんだケンプだったが、ある日、アメリカ人企業家のサンダーソンと知り合い、サンダーソンの婚約者シュノーの魅力に夢中になってしまう。共演にアーロン・エッカート、アンバー・ハードら。