カラフルで奇抜なファッションの人々とコンパクトカーが慌ただしく行き交い、デジタル広告があふれる街並み。秋葉原にインスパイアされた近未来の都市風景から始まる「ゼロの未来」は、IT企業に勤めるプログラマーの物語。
主人公は勤務先の代表取締役から直々に「“ゼロの定理”を解読せよ」という重要ミッションを下されるが、外出が嫌いで人付き合いが苦手という複数の“恐怖症持ち”である彼は精神的に壊れかけている。
自分はごくありふれた存在で、会社の消耗品にすぎないと気づいてしまい、生きる意味を見失っている。
“国家”を“IT企業”に置き換え、管理＆支配される人間の疎外感を描いた。
道化的なキャラクターからアナログなガジェット、主人公の住居兼オフィスである教会の廃墟まで、画面に映るものすべてがカオスに満ちている。
滑稽さと狂気が背中合わせ。
“すべてが無である”という数式と格闘する。
クリストフ・ワルツにティルダ・スウィントンやマット・デイモンもはこの中で怪演を披露する。
IT企業が支配する世界で、ちっぽけな人間は呪縛から逃れ、自分の存在意義を見出せるのか。
イメージを奇想天外なまでに肥大化させ、問いの答えをビジュアル化したクライマックスは、ギリアムの真骨頂。