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孤独で、人生が灰色であればあるほど、きっとあの人ならわかってくれるという思い入れ、幻想を越えた根拠のない確信によって、退屈な思春期をサバイブした人は意外と多いのではないだろうか。
その思いが秘密裏であればあるほど、それは強さとロマンを帯びてくる。
気恥ずかしくもあるテーマを、ここまで壮大に、ロマンティックに語れるのは、監督自身が8歳のときにレオナルド・ディカプリオにファンレターを書いた、そんな経験をした本人であるから。
その少年時代が、退屈であったかどうかは別として。
硬派なジャーナリストのオードリーは、上司から、いま話題の新進俳優ルパートの出したセンセーショナルな本について、本人の取材を頼まれる。10年前に、29歳で謎の死を遂げたスター、J・F・ドノヴァンと、当時子供だったルパートが交わしていた書簡を公開したもの。
たかがセレブの暴露本と斜に構えていたオードリーは、ルパートの語る鮮やかな回想に、徐々に引き込まれていく。
ディテールにこだわるドランが付けた題名は、ジョン・F・ドノヴァンの「生と死」ではなく、「死と生」。
スターであるドノヴァンの死を経て初めて明かされるその素顔は、「いつか僕らの真実を語ってほしい」という遺言のような彼の言葉を、ルパートが時を経て初めて実現させる。
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さまざまなテーマを内包しつつ、それらが感情のうねりで繋がり、鮮烈な人間模様のタピストリーを織り上げていく。
本作のキー・ソングとして、去って行った恋人への思いを切々と歌うアデルの「Rolling in the Deep」と、ザ・ヴァーヴの「Bitter Sweet Symphony」が効果的に使われているのは、ドランならではのセンス。
とくに艶やかなシンフォニーが万華鏡のような世界を彷彿させる後者は、苦悩と幸福を経た末に、新たな地平にたどり着き、謎めいた微笑みを浮かべるルパートの心境を代弁しているかのようである
取材を終えたルパートが、リバー・フェニックス似の友人が運転するバイクにまたがり去っていく姿は、言わずと知れた「マイ・ブライベート・アイダホ」のリバーとキアヌ・リーブスへのオマージュ。
分かち難い絆で結ばれていたあの映画の彼らの関係が、そのままルパートとドノヴァンの姿にシンクロし、ルパートが最後に見せる笑顔が、清々しい青春の芳香を観る者の心に残す。
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