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悪の教典

2012-12-04 06:22:50 | 映画
目的のためならば殺人もいとわない教師の姿を描いた貴志祐介の問題作を、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」「十三人の刺客」の三池崇史監督が映画化。
伊藤英明が主演し、自身初の悪役に挑んだ。
生徒から慕われ、学校やPTAからの評価も高い高校教師・蓮実聖司は、教師の鑑ともいうべき表向きの顔とは別に、他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)という隠された顔があった。
いじめ、モンスターペアレンツ、セクハラ、淫行など問題だらけの学校で、自らの目的を達するため、蓮実は躊躇なく殺人を繰り返していく。
しかしある日、ほんのささいなミスを犯してしまった蓮実は、それを隠匿するためクラスの生徒全員を惨殺することを決める。
冒頭で「匕首マッキー(マック・ザ・ナイフ)」のメランコリックなメロディが聴こえてくる。
もちろんブレヒトの芝居「三文オペラ」の挿入歌で、彼の詞に、クルト・ワイルが曲をつけた有名なスタンダード・ナンバーだが、何度か変奏され、劇中でも、主人公の蓮実(伊藤英明)が、内的モノローグの形で、この歌詞の内容を講釈してみせるくだりがある。
「鮫の獰猛な歯は真珠のように真っ白で、でも、殺し屋マッキーのナイフの鋭い刃の閃光と同じなのさ」といった意だ。
それは、あたかも、表面的には生徒に絶大な人気を誇る模範的な熱血教師でありながら、14歳で両親を惨殺したおぞましい過去を背負い、つねに猛々しい殺意を抱え持つサイコパスの主人公の奇怪な分裂した心象を代弁しているかのようでもある。
三池崇史監督は「愛と誠」を見る限りでは、ミュージカル・センスが欠如していると思っていたが、この「マック・ザ・ナイフ」の選曲は大当たりである。
三池監督がもっとも精彩を放つのは、「極道戦国志 不動」や「殺し屋1」のような善悪のモラルの枷(かせ)がはずれて、不埒な妄想が放し飼いにされたような世界を描く時だが、本作も、そのアモラルな作品群の系譜に位置するといえよう。
とにかく、虐殺宣言を告げるような、軽快なエラ・フィッツジェラルドの「マック・ザ・ナイフ」のボーカルにのって、散弾銃を持った蓮実先生の大殺戮が開始されるや、文化祭の前夜、40数名の生徒たちが学校に寝泊まりするという甘美で特権的な体験が、一瞬のうちに、血塗られた惨劇という悪夢へと変わってしまうのだ。


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