お洋服屋さんは既に秋冬物にシフトしているし、そろそろヘアスタイルを変えたい気持ちになってくる頃。
でも、今までに美容師に話してみて「このヘアスタイルにはできない」と断られたことはありませんか?
多くの美容師は、他のサービス業の人より「できない」とキッパリ言う傾向だと思います。
では、何がどう「できない」のか?
切りすぎたらそこで終了だからなのです。
美容師は基本的にお客様のオーダーを叶えようと技術を駆使するのですが、そのヘアスタイルを作れる見込みが無い場合には、必ず「できない」と断ります。
美容師にとっての商品はヘアスタイルの完成形なので、提供できそうにない場合は断るしかありません。
髪の毛を切りすぎたらそこで終了。
美容師は作業を始める前に、経験値に基づいて「この方法でやろう」と見立てがついてから、作業に移ります。
行き当たりばったりで「やりましょう」と安易にオーダーを受けて「やっぱりできなかった」とは言えません。
お金を戴いているため、どうなるかわからない「実験」はお客様にはできないのです。
材料がなくて「できない」
店では、全ての種類の薬剤を用意しているわけではありません。
置いておくスペースにも限界があるため、使う頻度が少ないものは用意せず、需要に応じて材料は仕入れています。
ヘアスタイルを作るための薬の用意がない場合、発注して届いてからでないと「できない」です。
髪の長さ、髪質、生えグセで「できない」
また、そのヘアスタイルが、ソモソモお客様の髪の毛で「できない」場合があります。
明確なイメージがあっても、髪の毛の長さが足りていなければもちろん同じようには作れないし、ウェーブの有り無しによっては、同じ長さでも違った形になります。
例えば、ぱっつんの前髪にしたいけど、いつも分けている分け目の生えグセが強いとパックリと別れてしまい、ぱっつん前髪をキープできません。
時間、予算が足りなくても「できない」になります。
薬剤を使うには、薬を効かせる時間がかかります。
元々予定していた所要時間を著しくオーバーするようだと、次に予約しているお客様が待たされることになります。
またお客様側の「○○時までにはお店を出たい」などの時間制限に対応できないと、お断りすることがあります。
お客様が予約時間に遅刻する場合も同じです。
10~20分の遅れでも、状況によって美容師の技術ではカバーしきれない場合があります。
例えばカラーは、幾つもの工程が必要な場合もあります。
グラデーションカラーやバレイヤージュカラーなどの特殊なヘアカラーは、1回のカラーでは再現できず、2回、3回分のカラーの工程が必要になります。
なので、戴く代金も2回分、3回分のカラー料金になります。
工程が増えるほどプラスで代金がかかり、特殊な工程やハイエンドな薬剤には別料金で対応するお店が多いと思います。
予約時には事前に「そのようなヘアスタイルにしたい」と伝えていただくと大変助かります。
双方ともにどれくらい時間と予算がかかるか、大まかに把握することができます。
「自分にはできない」これを隠している美容師を多く感じます。
美容師は「自分にはできない」という理由で断ることもあるのでは無いでしょうか。
これには、「やりたくない」「うまくできない」の2パターンがあります。
「やりたくない」とは、お客様の「こうしたい」のイメージに賛同できない状態です。
これは正直に言うと、ベテラン美容師で柔軟な考え方が少なくなった美容師に多く見られます。
技術的にとても上手な美容師なんだけど、作る物へのこだわりが強すぎると「そのヘアスタイルはカッコよくない」とチャレンジさせてもらえない。
その美容師にとって、自分の方程式から外れた最新トレンドのヘアスタイルが肯定できないのだと思います。
これは美容師側が悪いです。
美容師自身の絶対領域が凝り固まってしまうと、新しいヘアスタイルやファッションに否定的になり、トレンドとは離れてしまう場合もあります。
「うまくできない」とは、その美容師がやり方を知らない、やったことがない場合にお断りする状態です。
美容師は皆お洒落な人なイメージが強いですが、中にはトレンドに疎い方もいます。そしてトレーニングを怠っている美容師もいます。
ファッショントレンドに対する興味が薄れてしまうと、あっという間に流行は移り変わって行きます。
勉強不足というか、特徴を捉えきれないままでいると、求めるヘアスタイルを再現できません。
技術は出たとこ勝負ではできません。
できる技術の経験則を探ってもやり方を見出せないヘアスタイルは、その美容師にはできません。
例えば、ドレッドヘアにしてくれと言ってもほとんどの美容師から断られます。
そもそもドレッドヘアはほとんどの美容室で「できない」ヘアスタイルです。
需要の少ない技術は先輩から教わることがなく、そもそも教えられる技術を持った先輩美容師も少ないため、基本的には一部の専門店でしかできません。
今では男性の刈り上げも、それに属するらしいです。
物理的に「できない」のか、その美容師が「できない」のか?
また一部の美容師には、苦手な技術を避けるように誘導する方もいます。
例えば、ショートヘアが苦手な美容師は意外と多いです。
髪の毛が短いほど髪質や生えグセ、頭の形がヘアスタイルに反映されるため、技術と経験が必要になります。
ですが苦手なままでいても、ショートヘアにしたいお客様はお店に来ます。
できもしないのに無理やり切って、森昌子ばりのモンチッチになってしまうのは避けたい。
すると頑なにショートヘアにしないための言葉を並べ、論破してしまう。
良くも悪くも美容師は口が上手
初めていらっしゃるお客様の中には、長い間同じ美容師にお世話になっていたと言う方も多くいます。
説明しながら話を進めると、「美容師に言われていたから、自分にはショートはできないと思っていた」と言われることもままあります。
それが物理的にできなかったのか、それともその美容師にはできなかったのか。
同業者としては残念な気持ちですが、その美容師としては「自分の得意なロングヘアを売りたい」と思っていた面もあるのかもしれません。
まだまだこれだけではない、お客様が知られていない美容師や美容室の内面は存在します。
悪い意味での内面は解決してよい内面にしていこうと進めていまっすから、多くの悪い事を隠して作業を進めているわけではありませんのでご安心ください。
どの仕事も日々勉強だと思います。現状維持するためには向上する気持ちを持って物事を進めて初めて維持できるともいわれます。
そう考えますと毎日が襟を正す想いです。