◎私たちの心の衰えを木ッ葉微塵に吹きとばす
昨日の続きである。平凡社の「人間の記録双書」シリーズについて紹介している。佐藤一『被告――松川事件の二十人』(一九五八)にはさみこまれていた宣伝用のチラシから、同シリーズの内容を紹介している(改行は、原文のまま)。
このシリーズにこだわる理由はないが、ことによると、このシリーズは、平凡社時代の谷川健一が担当していて、宣伝文も谷川が書いているのではないか、などと思っている。「私たちの心の衰えを木ッ葉微塵に吹きとばす」。なかなか思いつかない、巧みな宣伝文である。
歳森薫信著 検 事 定価 二二〇円
南極大陸やヒマラヤ山脈だけが現代の秘境ではない。一
青年検察官の見た「正義の府」は、どす黒い人間嫉視とエ
ゴイズムの渦まく世界だった。庶民ののぞき見を許さない
官僚機構の内幕に、鋭くメスを入れた問題の書である。
岸本英男著 ゆりかごの学級 定価 二三〇円
幼児期をすぎても、ゆりかごを必要とする子供たちをど
うするか。精神薄麗児の教育に末経験の筆者が、幾多のつ
まづきと挫折をこえて、「一燈よし暗くとも一燈をかかげて
進まん」と築いた成果は、すべての親に光明を与えよう。
狩野誠著 開拓農民 定価 一九〇円
「どんとおいらはパイオニア」戦後の棄民政策に抵抗して
青年たちがうちこんだ希求の鍬! それは思想の開墾であ
り、人間性の耕作でもあった。黒姫山麓に築き上げた「新
しき村」の記録は、百姓の声なぎ声を遺憾なく物語る。
真山美保著 日本中が私の劇場 定価 二六〇円
日本一のドサ廻り劇団! つまづいても転んでも、泣い
て、笑って、逞しく起ち上ってきた真山一座のはばたきの
記録が、私たちの心の衰えを木ッ葉微塵に吹きとばす。日
本中の津々浦々に、手から手へ伝えられている情熱の書。【以下、次回】