礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

森友学園問題から見えてきたもの(その2)

2018-03-14 04:07:25 | コラムと名言

◎森友学園問題から見えてきたもの(その2)

 昨日の報道によって、森友学園にかかわる決裁文書の「書き換え」の様子が、ほぼ明らかになった。NHK NEWS WEBの「全文書掲載/「森友」文書 書き換え/財務省調査結果」(2018・3・13)から、少し引用してみる(太字部分は、決裁文書から削除されたところ)。

 削除される前は平成26年4月28日に行われた打ち合わせでの学園側の発言として、打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから前に進めてください』とのお言葉をいただいた」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)と書かれていました。
 さらに平成27年1月8日に森友学園が小学校の運営に乗り出すことを伝える新聞社の記事がインターネットに掲載されたとしたうえで、記事の中で、安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載されると書かれていました。
 また「森友学園の概要」をまとめた文書では、理事長だった籠池泰典氏が「日本会議大阪」に関与しているとしたうえで、この団体を説明する注意書きとして、国会においては、日本会議と連携する組織として超党派による「日本会議国会議員懇談会」が平成9年5月に設立され、現在、役員には特別顧問として麻生太郎財務大臣、会長に平沼赳夫議員、副会長に安倍晋三総理らが就任と書かれていました。

 削除された部分は、三一〇箇所に及ぶとされ、右で挙げられているのは、あくまでも、その一部である。しかし、右の例から推せば、「安倍昭恵総理夫人」、「安倍晋三総理」にかかわる部分が、すべて周到に削除されたことが考えられる。
 これについては、安倍晋三首相が、自分あるいは妻が、この問題に関係しているなら、「首相も議員も辞める」と発言した(二〇一七年二月一七日)のを受け、近畿財務局の官僚が、「忖度」をおこなった可能性もある。一方で、これだけ、削除が徹底しているということは、この削除は、単に「官僚の忖度」によるものというより、閣僚レベルからの「指示」、例えば、「日本会議に触れている記述は削れ」などの、具体的な「指示」に従ったものである可能性も高い。こうした経緯については、今後の「解明」を期待したい。
「隠すより現る」という言葉がある。昨日になって、隠されてきたことが明らかになり、それによって真相が見えてきた。この事件のキーパーソンが安倍昭恵夫人であること、この事件のキーワードが「日本会議」であることなどが、その真相の一部である。
 なお、昨年の三月九日、このブログで、「森友学園問題から見えてきたもの」というコラムを書いた。本日のコラムは、その続編である。参考までに、昨年三月九日のコラムを、そのまま、紹介させていただく。

◎森友学園問題から見えてきたもの

 森友学園問題が、このあと、どのような展開をたどるかは、もちろん、まだ予測はつかない。
 しかし、今の段階で、すでに、この問題から見えてきたものが、いくつかある。本日は、それらについて述べてみよう。
 第一に、「日本会議」という宗教的・政治的組織が、今日の政権に深く関与している事実が、国民の前に明らかになったということである。
 第二に、その「日本会議」のイデオロギーの一端が、塚本幼稚園における「園児の宣誓」などの映像で、国民の前に明らかになったということである。
 第三に、行政府の長たる安倍晋三首相が、危機管理の上で、適切でない言動をするということが、国民の前に明らかになったということである。
 順に、述べてゆこう。「日本会議」という組織の存在を、多くの国民が意識するようになったのは、昨二〇一六年五月一日に菅野完〈スガノ・タモツ〉氏の『日本会議の研究』(扶桑社新書)が刊行されて以降のことだった。同書の刊行に際しては、同年四月二八日付で、日本会議側が、扶桑社に対し、「直ちに出版の差し止めを求める」という申し入れをおこなった。これによって、同書の存在は大きくクローズアップされ、同時に、日本会議という組織の存在自体もまた、クローズアップされることになった。
『日本会議の研究』は、日本会議が出版停止を申し入れたことでもわかる通り、日本会議に対する批判的研究である。このような本が、フジ・サンケイグループに属する扶桑社から出されたことは不思議なことだった。私などは、いまだに、何か「ワケ」があったのではないかと邪推している。
 この『日本会議の研究』の研究に続いて、上杉聰〈サトシ〉氏の『日本会議とは何か 「憲法改正」に突き進むカルト集団』(合同ブックレット、二〇一六年五月一八日)、俵義文〈ヨシフミ〉氏の『日本会議の全貌』(花伝社、二〇一六年六月一七日)、青木理〈オサム〉氏の『日本会議の正体』(平凡社新書、二〇一六年七月八日)、山崎雅弘氏の『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書、二〇一六年七月一五日)などの本が、刊行された。
 これらの本が刊行され、話題になったことによって、多くの国民が、「日本会議」という宗教的・政治的組織の名前を覚え、それが今日の政権運営に深く関与しているらしいということを理解した。
 しかし、昨年までの段階では、多くの国民は、日本会議という組織が、どのように政権運営に関わっているかということについて、具体的なイメージ、あるいはリアルな認識を持ってはいなかった。そこに急浮上したのが、森友学園問題であった。
 最初は、インターネットのブログに載った塚本幼稚園に関する記事であった。時期は、早いもので二〇一六年七月、人々の注目を集めるようになったのは、本年一月以降だったと思う。
 この問題が拡大した要因のひとつとして、そうした記事に対し、森友学園塚本幼稚園、あるいは同幼稚園の教育方針を支持する人たちから、過剰な反応があったということが考えられる。
 本年二月初めかと思われるが、インターネットに、「インターネット上での当園に対する/誹謗・中傷記事について」と題する文書が載った。署名は、「学校法人 森友学園 /塚本幼稚園幼児教育学園/園長 籠池 泰典」。
 その初めの部分を引用してみよう(改行は原文のまま)。
《昨今、インターネット上で、当園に対する不当な誹謗・中傷記事が書かれたブ
ログが立ち上げられ 園及び保護者に対する悪口や嘘が投稿されております。
これらの内容は全くの事実無根であり、保護者間の分裂を図り、当園の教育活
動を著しく害するものです。》
 ここまでは、当然ありうる反論だが、それに続く二行が異様であった。
《専門機関による調査の結果、投稿者は、巧妙に潜り込んだ K 国・C 国人等の元
不良保護者であることがわかりました。》
「K 国・C 国人等」とあるのは、「韓国・中国人等」と言おうとしたものであろう。これ自体、問題だが、それに「元不良保護者」というレッテルを貼ったことで、この幼稚園長が、良識ある教育者とは言いがたい人物であることが明らかになった。
 この文書が登場したあたりから、森友学園をめぐる問題は、インターネット上の話題から、マスコミが注目し報道し、多くの国民が注目する話題になっていった。その結果、次々と新しい疑惑が浮上し、それらの疑惑の背景に、「日本会議」という存在がからんでいるという印象が強まった。
 当初は、塚本幼稚園における教育手法をめぐる問題だった。しかし、この問題は、森友学園「瑞穂穂の國記念小學院」(二〇一七年四月開校予定)に対する国有地払い下げ問題に移行していった。同校の名誉校長には、一時、安倍昭恵夫人の名前が挙がっていた。また同行の校名は、申請の段階では、「安倍晋三記念小学校」であったという。
 国有地払い下げ問題のカギは、「日本会議」である。森友学園の籠池泰典理事長は、日本会議大阪支部の役員である。安倍晋三首相は、麻生太郎財務相とともに、「日本会議国会議員懇談会」の特別顧問である。また、今回の国有地払い下げに関しては、日本会議国会議員懇談会の会員である鴻池祥肇〈コウノイケ・ヨシタダ〉参議院議員に対して、籠池泰典理事長夫妻が、「封筒のようなもの」を差し出したという話がある(鴻池議員は、これを受け取らなかったという)。
 日本会議側は、みずからの組織と今回の国有地払い下げ問題との関係を否定するに違いない。しかし、安倍昭恵夫人が、一時、瑞穂の國記念小學院の名誉校長の地位にあった事実は動かない。
 籠池泰典氏が日本会議大阪支部の役員であって、バックに日本会議国会議員懇談会特別顧問の安倍晋三首相がついているらしい、でなければ、昭恵夫人が名誉校長になっているはずがない。――中央あるいは地方の官僚たちは、こういった「誤想」に基づいて、森友学園の要望に対して、便宜を図ったのであろう。
 あるいは、「日本会議」という存在それ自体が、「葵の紋所」のような権威を持ちはじめており、その名前を出しただけで、中央あるいは地方の官僚たちがひれ伏すといった事態が、すでに、今日の日本に生じているのかもしれない。
 日本会議という組織と、今回の国有地払い下げ問題とが結びついていることは、やはり、否定できないように思う。
 今回の問題で、日本会議のイメージは、大きく低下した。それは、日本会議の目指す教育のイメージが、写真や動画という形で、多くの国民に広まってしまったからである。塚本幼稚園の園児たちが、右手に日章旗(日の丸)、左手に旭日旗(軍艦旗)を持っている姿を見て、あるいは、「安倍総理ガンバレ 安倍総理ガンバレ」などと叫んでいる姿を見て、日本会議の「本質」に、はじめて気づいた人も少なくないだろう。
 山崎雅弘氏は、その著書『日本会議 戦前回帰への情念』の一一〇ページで、安倍首相や日本会議が取り戻したいと考えている「輝かしい日本」とは、昭和初期の日本、戦前・戦中の日本であると指摘している。塚本幼稚園の教育を紹介した写真や動画は、山崎氏の指摘の正しさを、端的な形で示すことになった。
 しかし、これについても、当然、日本会議側の反論があるだろう。塚本幼稚園における教育は、日本会議が理想とする教育を、意図的に歪曲したものである、と。そうかもしれない。しかし、もしそうであるのならば、日本会議は、即刻、籠池泰典氏を日本会議から除名すべきである。少なくとも、大阪支部役員から退けるべきである。そして、塚本幼稚園の教育実践に替る、日本会議が理想とするような教育実践のイメージを、具体的に示すべきである。
 三番目の問題(安倍首相の危機管理)については、すでに、今月四日〔二〇一七年三月四日〕のブログで述べたので繰り返さない。

 以上が、昨年三月九日のコラムである。このうち、〝また同行の校名は、申請の段階では、「安倍晋三記念小学校」であったという。〟という部分(下線)は、「同行」という誤変換も含め、次のように訂正しなければならない。

 また籠池泰典理事長は、同校の建設計画を進めていた当初、「安倍晋三記念小学校」という仮称を用いたことがあったという。

*このブログの人気記事 2018・3・14(やはり「日本会議」が強い)

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