◎細江逸記著『英文法汎論』(1917年5月初版)について
細江逸記著の『英文法汎論 AN OUTLINE OF ENGLISH SYNTAX』は、英文法の古典的名著とされている。ちなみに、一九八五年一月に篠崎書林から刊行された「改訂新版」に対し、89万8789円の古書価を付けているアマゾン出品者がいる(二〇二一年一〇月一三日閲覧)。
この本の初版は、一九一七年(大正六)五月に発行されたらしい。「らしい」というのは、国立国会図書館で、その「初版」が確認できないからである。
国立国会図書館に架蔵されている『英文法汎論』のうち最も古いものは、奥付に「大正十五年十月二十日発行」とあるもので、これは今日、デジタルコレクションで、容易に閲覧できる。仮に、これを「大正十五年本」と呼んでおく。その奥付は次の通り。
大正十五年十月十七日 印 刷
大正十五年十月二十日 発 行
英 文 法 汎 論/不 許 複 製/定 価 金 参 円
著 作 者 細 江 逸 記
発 行 者 篠 崎 信 次/東京市神田区錦町一丁目十九番地
印 刷 者 寺井藤佐工門/東京市牛込区市谷加賀町一丁目十二番地
大正十五年本の冒頭には、「再版に臨みて」という一文がある。この冒頭に、「今年五月本書が初めて世に出て」あり、末尾に、「大正六年十一月 細江逸記」という署名がある。このことから、『英文法汎論』は、その初版が一九一七年(大正六)五月に発行され、その再版が一九一七年(大正六)の末、あるいは一九一八年(大正七)の初めに発行されと思われる。
大正十五年本には、「再版に臨みて」のあとに、さらに「訂正続版に際して」という一文が載っている。その末尾には、「大正十五年九月 細江逸記」という署名がある。これによって、国立国会図書館架蔵の大正十五年本は、正確には、「訂正続版」であったことがわかる。
私は、この本の「第十三版」を持っている。参考までに、この奥付も引いておこう。
大正十五年十月十七日 印 刷
大正十五年十月二十日 発 行
昭和二十五年十二月二十日 第十三版発行
英 文 法 汎 論/不 許 複 製/定 価 金 参 百 円
著 作 者 細江 逸記
発 行 者 篠崎 萬蔵/東京都千代田区神田錦町一ノ十三
印 刷 者 小 坂 孟/東京都新宿区市ケ谷加賀町一ノ十二
これらの奥付から、大正十五年本=訂正続版が、その後は、「初版」として位置づけられたことがわかる。
細江逸記の『英文法汎論』については、まだ述べたいことがあるが、それは一週間ほど置いてから。
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