◎宗教団体の国家社会に対する活動の敏活化が期待せられる
あいかわらず、松尾長造述『宗教団体法解説』(仏教連合会、一九三九)の紹介である。
すでに、「一、成立までの経過」と「二、制定の理由」を紹介した。このあとに、「三、逐条解説」が続くが、都合でこれを割愛し、本日は、そのあとの「四、実施後の影響」を紹介する。ただし、その前半のみ。ページ数でいうと、三九ページから四一ページまで。
四、実施後の影響
之で大体宗教団体法は一通り御説明申上げたのでありますが、然らば宗教団体法は斯う云ふ風にして出来ると、どう云ふことになるか。私は本法の運用其の宜しきを得るならば、効果甚大、宗教界も大いに活気を呈するに至るであらうと存じます。
第一に、宗教行政自体の能率が増進しようと思ひます。今までの多岐多様、雑然たる宗教法規を苦労しながら運用して居つた宗教行政が、宗教法規の簡易化に依つて一目瞭然となりますから、少しも心配なく行政が行はれる。之は一つの重要なる利益であります。
第二に、法規の簡易化に依りまして宗教団体の活動能力増進が期待出来ようと思ひます。殊に教派・宗派当局は今まで尨大なる宗教法規に悩みつゝ、其の下に教規・宗制を作り、更に施行細則を作つて汗牛充棟も啻〈タダ〉ならぬ規則に縛られつゝ泳いで居られたのでありますが、今回斯う云ふ簡易なる法規の下に、それぐ適当な法規を作つて活動なされゝば、今まで費されたヱネルギーが余分に出ますから、其のエネルギーを国家社会の為め適当に御使用になることが出来る、宗教団体の活動能力増進と云ふことは多々期待出来るではなからうかと思ふのであります。
第三に、本法に依りまして宗教団体が法人格を附与せられますので、宗教団体の国家社会に対する責任ある活動の敏活化が期待せられる。法人に非ざる団体と云ふものは、法人団体に比較して国家社会に対してハツキリした責任を取つて居りませぬ。何となれば自分自身独立の行動が出来ない、分り易い話が、自分自身で預金が出来ない、況んや〈イワンヤ〉金など貸して呉れない。今までの宗派は謂はゞ未成年者みたやうなもので、後見人がなければ一人前に扱はれなかつた状態であります。今度之に法人格が附けば一人前でありまして、独立の経済活動も出来、一人前の法律活動も出来るのであります。今までは宗派・教派で学校でも建てようとすれば、自然人たろ管長が設立者になる、或は宗務所の某が設立者となる。それでは甚だ不便で困るから財団でもこしらへてやつて居ると云ふ状態でありました。所が今度法人格が附与せられるならば、それに依つて責任的行為が出来る様になり、国家社会に対しての御奉公が極めて明瞭化することに相成ると思ひます。【以下、次回】
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