◎七尾線から北陸鉄道能登線に乗り換え能登高浜駅で下車
昨日の続きである。新潮文庫版で『ゼロの焦点』の原作を読むと、能登半島の西海岸まで出かける場面の設定が、少し映画とは違っている。
金沢駅から七尾線に乗り、羽咋駅で北陸鉄道能登線に乗り換えるまでは同じ。そのあと、鵜原禎子は、北陸鉄道能登線の能登高浜駅で下車し、そこから、「高浜の警察分署」に向かう。「高浜の警察分署」は、ここで松本清張が、そう呼んでいるだけで、当時の正式名は不明。
原文を引いてみる。
禎子は、金沢を、十三時五分の輪島行きの列車で発った。
車内は狭くて粗末であった。禎子はひとりで窓ぎわにすわったが、前には土地の青年が二人腰かけて、津幡〈ツバタ〉の駅におりるまで映画の話をしていた。
汽車は本線から分かれて、小さい駅に頻繁にとまりながら走った。湖のような水がみえたり、山が近づいたりした。それは地図の上に描かれた拳【こぶし】のような半島をはいあがっているのだった。
羽咋【はくい】の駅には一時間ばかりで着いた。この駅から乗りかえて、さらに小さい電車に移り、能登高浜【のとたかはま】まで行くには一時間以上を要した。この間、海が見えたり隠れたりした。
【中略】
能登高浜駅におりたときには四時を過ぎていた。冬の短い日脚は、もう空にたそがれがただよいはじめていた。
禎子は高浜の警察分署を訪ねた。駐在所を少し大きくしたような建物だった。
原作では、身元不明の死体は仮埋葬してあって、禎子は死体の写真を見せられている。
死体が「別人」のものとわかったあと、禎子は、断崖のある海岸に向かう。西の海に、すでに日が沈みかけている。その海岸の地名は、原作では「赤住」【あかすみ】となっている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます