9月29日に沖縄で開催された「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に対して、産経新聞とチャンネル桜が盛んにケチをつけています。両者曰く「あんな狭い会場に11万人も入るわけが無い」「県民大会の参加者11万人という主催者発表は捏造だ、実際に参加したのは実は4万人強だったのだ」と、もう言いたい放題です。チャンネル桜に至っては、それに加えて「沖縄県人は戦後補償を掠め取る為に被害者面して政府にたかっている」「全国平均の6倍の犯罪発生率の沖縄の高校生が教職員組合に扇動されて集会参加」「集会の行き着く先は反日の沖縄自治区建設」とまあ、勝共連合レベルのトンデモ言説まで披露しています。
・沖縄教科書抗議集会、参加者は「4万人強」 主催者発表11万人にモノ言えず (産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n3.htm
・水島総・怒り度★★★★★/沖縄ヤラセ集会(YouTube―チャンネル桜)
http://youtube.com/watch?v=MzQ9xGxwnZ4
「あんな狭い会場に11万人も入るわけが無い」とか言われても、私は現地に行った事がないので分りません。それで一応ネットで調べてみました。宜野湾市のHPによれば、大会会場となった宜野湾海浜公園は面積158.8ヘクタールとの事です。それを規模が近そうな大阪の公園と比較してみます。すると、万博記念公園が264ヘクタールで甲子園球場の約65倍、花博記念鶴見緑地が106ヘクタール余りでした(いずれも下記URL参照)。「鶴見緑地よりは広く万博記念公園よりは狭い」という事は、何だ結構広いではないですか。ちなみに別の資料によれば、甲子園球場の最多入場者数が5万人余。宜野湾の例で換算すると、5万人×65倍×158.8/264=195万人余も収容可能という事になってしまう。幾ら何でも195万人は無理でしょうが、11万人なら充分収容可能です。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/yoshina/column/02/Mizumashi.html
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/2556/2600/2639/kouen/807.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%87%E5%8D%9A%E8%A8%98%E5%BF%B5%E5%85%AC%E5%9C%92
http://www.ocsga.or.jp/osakapark/hfm_park/01tsurumi/index.html
この「県民大会参加者11万人捏造」説については、私があれこれ詮索するよりも先に、既に下記ブログで的確に反論が為されています。特にその中でも、青瓢箪さんのブログで(何とこの人はご自身も自称ネットウヨクとの事ですが)、当該産経記事の論調に沿って逐一具体的に反論されているのが、非常に目を引きます。
・[産経ヲチ]頭が変だよ産経抄!(土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。)
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20071003/1191391974
・[産経ヲチ][政治]産経新聞のストレート・トゥ・ヘルな馬鹿ぶりには胸が熱くなる(同上)
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20071007/1191744036
・[watch][sankei][iza]産経抄、芸に徹する。(黙然日記)
http://d.hatena.ne.jp/pr3/20071003/1191390246
・11万人参加の沖縄県民大会、産経だけ報道せず(美しい壷日記)
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-entry-143.html
・[集団自決記載問題]これが産経クオリティ(風のコメ)
http://d.hatena.ne.jp/comumikaze/20071007/1191742952
・朝日にだけ噛み付く産経&ネトウヨ(2ちゃんねるとネット右翼ウォッチング&その分析)
http://blog.goo.ne.jp/ngc2497/e/1f6bb7d23439b83e46eca9ae8f5cf3c7
・沖縄戦の被害者の苦しみを隠したり故意に無視したりすることは被害者への二次的加害ではないでしょうか。(再び、日本軍による沖縄での住民への自決強制をめぐって)(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-425.html
・沖縄県民大会参加人数で新聞“場外戦”~沖縄県民がどう感じているか考えないのだろうか……。(東京新聞10月10日付「こちら特報部」より)(Because It's There)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-597.html
集会参加者数が主催者発表と警察発表で大きく乖離している―これが「11万人捏造」説の根拠なのだそうです―更に言えば、この警察発表だとされる4万人という数は、産経新聞と統一協会機関紙「世界日報」でしか報じられていないものでした。仮にも全国紙ともあろうものが、統一協会(勝共連合)辺りの言い値をそのまま裏取りもせずに孫引きするほど愚かではないと思うのですが、あの産経ならこういう事もやりかねないかも知れません。しかし、こちらは勝共如きの相手までしていられるほど暇ではないので、ここは素直に警察発表だという事にしておきます―。
それで話を戻して、この主催者発表と警察発表の数の乖離ですが、こういう事は何も今に始まった事ではなく、実は昔からよくあった事なのです。チケット販売枚数から参加者数をある程度割り出す事の出来る興行巡業などとは違い、数万人以上の集会ともなれば、いちいち現場で実数をカウントする事など、実際は不可能なのです。
だから主催者としては、動員予定(見込)数を基に、当日現地の混み具合や上空から撮った航空写真の映像から経験的に過去のデータと照らし合わせて、「だいたいこんなモンだろう」と腰だめの数で把握するしかないのです。その中には当然、多少のサバ読みもあるでしょう。これには右派・左派系の違いはありません。
その一方で警察としては、警備や交通規制の必要もあるので、混雑が予想されるであろう時間帯・地点について、事前に計数機を使って参加人数の予測を出す必要に迫られます。これは参加のべ人数に重きを置いたものではなく、あくまで当該地点での通過人数を主眼とした予測数なので、主催者側のサバ読み数よりは常に少な目な数になります。その中には、事態を過小評価しようとする国家権力の意向も、当然反映されているでしょう。
一昔前なら、こんな事は新聞の読み手もメディア・リテラシーの作法として当然織り込んだ上で、その上で記事を読みこなしていたものでした。しかし近年は警察側が参加人数を余り公表しなくなった事もあって、主催者発表を「額面通り」受け取る風潮が出て来て、やれ捏造だ何だと騒ぐ輩が増えたようです。
しかし、若し仮に参加者数が少ない方の4万人強だったとしても、全県人口137万人の離島県でそれだけ集まったのなら、大したものだと思います。それを産経みたいに、こんな広く世論に事の是非を問うべき内容を孕んだ政治ニュースを、第一報をたった二段の三面記事だけで済ませて、後はコラム「産経抄」その他で難癖付のオンパレードばかりというのでは、とても公平な報道姿勢だとは思えません。
ところが実際は、当初主催者が予測していた5万人を遥かに上回る11万人強の参加で、県民集会は成功したのでした。会場に向かうバスは始発のターミナルで既に満員で、途中の停留所からはもう乗れない状況が続き、道路も大渋滞だったそうです。会場周辺からもあふれ出た人たちは、近くのビルのフロア・階段・屋上などに上がって集会を覗き見たそうです。集会が終わってからも会場に押し寄せる人の波が続いたとの事です。これらの人たちも参加出来ていたら、集会は15万人規模にまで膨れ上がっていた事でしょう。
そして、集会は沖縄本島の宜野湾海浜公園だけではなかったのです。離島の宮古島や石垣島でも、当該県民大会と同趣旨の郡民大会が、それぞれ数千人規模で開催されていたのです。この人数までカウントすると、最終的な参加人数はどれくらいになるでしょうか。
集会の性格やその広がりも特筆すべき事でした。沖縄県議会で二度も全会一致で抗議決議が上がり、県下41の全市町村議会でも抗議決議が為され、県民集会には保守系の知事・県議会議長や、自民党・公明党も含めた全政党関係者、市町村長・議会関係者・教育長・PTA会長・行政区長などの行政関係まで含め、官民総がかりの参加が為され、地元バス会社も会場へのバス代を無料にして、集会をバックアップしました。この取組みが、何で三面記事の僅か二段切り抜きなのですか。そして、それを「タカリ」と貶めて終わりとするに至っては、余りにも県民をバカにした話です。
チャンネル桜の「タカリ」発言の中には「自民党政府が口封じの為に沖縄に飴玉をしゃぶらせ続けた事で、県民のタカリ体質が助長された」なんて件もありますが、それなら尚更の事、基地・戦後補償問題の根本的解決を避け続けている自民党政府を非難すべきです。それを、徒に政府御用に走り一方的に県民を貶めるだけとは、お門違いも甚だしいと言わざるを得ません。
そもそも産経・チャンネル桜やそれを愛読・視聴するネットウヨク層たちは、先の自民党総裁選での麻生候補の秋葉原街頭演説に集まった聴衆の数も主催者陣営発表と警察発表とで大きく乖離している事や、産経新聞自身が押し紙(最初1ヶ月の無料サービスや架空の販売部数)を新聞販売店に押し付けて公称販売部数を水増ししている(これは他紙も同じだが産経は特に酷い)事には何も言わず、沖縄の事ばかりを槍玉に挙げていますが、これこそ、産経が他紙を揶揄する時に使う常套句「ダブル・スタンダード」の最たるものではないですか。
「県民大会参加者11万人捏造」説を声高に唱える産経新聞ですが、その政治姿勢が到底「公平・中道」と呼べるものでない事は、既に世間にも広く知られている事実です。その事は、50年代末の経営危機に際し政府・財界筋が直接資金援助に乗り出してきて以来、第二組合の社内育成・大量首切り断行を行う中で、60年代からは事実上の「自民党・財界の御用機関紙」として機能してきたという、その出自からも明らかです。チャンネル桜に至っては、言わずと知れたネットウヨク御用達のミニ・メディアでしかありません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A3%E7%B5%8C%E6%96%B0%E8%81%9E
こんな産経新聞やチャンネル桜ですが、それでも時には、北朝鮮・拉致問題や、東トルキスタンなど中国国内での少数民族弾圧の実態を報じたりなど、既存メディアが今まで余り取り上げなかった話題を提供してくれるので、それなりに意義はあります(但し、その産経も他紙と同様に北朝鮮賛美に走っていた時期があるのですが、それはさて置き)。しかしそれは「産経やチャンネル桜だから」ではなく、北朝鮮や中国の問題自体が持つ事実の重みが読者を突き動かしたからです。読者はそこからメディア・リテラシーを働かせて、デマや誇張や政治利用と思われる部分は割引き、真実と思われる部分のみを選択すれば良いのです。
しかしこの「県民大会参加者11万人捏造」説の様に、ここまでフレームアップに走るとなると、逆に自身の報道姿勢や存在意義を問われる事態になるとは、産経やチャンネル桜は思わないのでしょうか。特に沖縄県民を「タカリ、犯罪予備軍」呼ばわりしているチャンネル桜に至っては、従軍慰安婦を売春婦、ホームレスを怠け者、ワーキングプアを自己責任、原爆被爆者やハンセン病患者をタカリ、未解放民をエタ・呼ばわりするのと、同じ様なものではないですか。
私がこの件で憤っているのも、正にその点に関してです。自分にとって都合の悪い事・物・人に対しては、その存在自体を無視し相手の人格まで貶めようとする様は、まるでネットウヨクのヘイトスピーチそのものです。ここまで来ると、もはや彼我のイデオロギーや立場の違いで済まされるものではなく、それ以前に人間性の問題として捉えざるを得ません。同じ右派・財界系メディアの読売・日経新聞ですら、県民集会・集団自決・沖縄戦の評価はいろいろあっても、事実はそれなりの分量で以ってきちんと伝えている事と比べても、産経新聞の論調の異常性は際立っています。チャンネル桜については影響力が限られるのでまだ良いとしても、少なくとも産経新聞に関しては、こんなメディアが四大全国紙の一つとして通用しているのですから、日本のメディア劣化の程度は相当深刻だと言わざるを得ません。
この「11万人捏造」説を巡っては、朝日新聞と産経新聞との間で紙上論争が続いています。小泉政治・ネオリベ(新自由主義)礼賛の朝日新聞が「弱者の味方」であるとは更々思いませんが、それでも、小泉・安倍政治=ネオコン(新保守主義)・ネオリベ礼賛で何でも政府・財界御用の、ここまでフレームアップやダブル・スタンダード丸出しの産経新聞よりは、まだよっぽどマシです。こんなジャーナリズムとは縁もゆかりも無いイエローペーパー産経新聞など、市民の力で一刻も早く廃刊に追い込んでしまわないといけません。
・沖縄教科書抗議集会、参加者は「4万人強」 主催者発表11万人にモノ言えず (産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n3.htm
・水島総・怒り度★★★★★/沖縄ヤラセ集会(YouTube―チャンネル桜)
http://youtube.com/watch?v=MzQ9xGxwnZ4
「あんな狭い会場に11万人も入るわけが無い」とか言われても、私は現地に行った事がないので分りません。それで一応ネットで調べてみました。宜野湾市のHPによれば、大会会場となった宜野湾海浜公園は面積158.8ヘクタールとの事です。それを規模が近そうな大阪の公園と比較してみます。すると、万博記念公園が264ヘクタールで甲子園球場の約65倍、花博記念鶴見緑地が106ヘクタール余りでした(いずれも下記URL参照)。「鶴見緑地よりは広く万博記念公園よりは狭い」という事は、何だ結構広いではないですか。ちなみに別の資料によれば、甲子園球場の最多入場者数が5万人余。宜野湾の例で換算すると、5万人×65倍×158.8/264=195万人余も収容可能という事になってしまう。幾ら何でも195万人は無理でしょうが、11万人なら充分収容可能です。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/yoshina/column/02/Mizumashi.html
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/2556/2600/2639/kouen/807.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%87%E5%8D%9A%E8%A8%98%E5%BF%B5%E5%85%AC%E5%9C%92
http://www.ocsga.or.jp/osakapark/hfm_park/01tsurumi/index.html
この「県民大会参加者11万人捏造」説については、私があれこれ詮索するよりも先に、既に下記ブログで的確に反論が為されています。特にその中でも、青瓢箪さんのブログで(何とこの人はご自身も自称ネットウヨクとの事ですが)、当該産経記事の論調に沿って逐一具体的に反論されているのが、非常に目を引きます。
・[産経ヲチ]頭が変だよ産経抄!(土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。)
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20071003/1191391974
・[産経ヲチ][政治]産経新聞のストレート・トゥ・ヘルな馬鹿ぶりには胸が熱くなる(同上)
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20071007/1191744036
・[watch][sankei][iza]産経抄、芸に徹する。(黙然日記)
http://d.hatena.ne.jp/pr3/20071003/1191390246
・11万人参加の沖縄県民大会、産経だけ報道せず(美しい壷日記)
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-entry-143.html
・[集団自決記載問題]これが産経クオリティ(風のコメ)
http://d.hatena.ne.jp/comumikaze/20071007/1191742952
・朝日にだけ噛み付く産経&ネトウヨ(2ちゃんねるとネット右翼ウォッチング&その分析)
http://blog.goo.ne.jp/ngc2497/e/1f6bb7d23439b83e46eca9ae8f5cf3c7
・沖縄戦の被害者の苦しみを隠したり故意に無視したりすることは被害者への二次的加害ではないでしょうか。(再び、日本軍による沖縄での住民への自決強制をめぐって)(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-425.html
・沖縄県民大会参加人数で新聞“場外戦”~沖縄県民がどう感じているか考えないのだろうか……。(東京新聞10月10日付「こちら特報部」より)(Because It's There)
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-597.html
集会参加者数が主催者発表と警察発表で大きく乖離している―これが「11万人捏造」説の根拠なのだそうです―更に言えば、この警察発表だとされる4万人という数は、産経新聞と統一協会機関紙「世界日報」でしか報じられていないものでした。仮にも全国紙ともあろうものが、統一協会(勝共連合)辺りの言い値をそのまま裏取りもせずに孫引きするほど愚かではないと思うのですが、あの産経ならこういう事もやりかねないかも知れません。しかし、こちらは勝共如きの相手までしていられるほど暇ではないので、ここは素直に警察発表だという事にしておきます―。
それで話を戻して、この主催者発表と警察発表の数の乖離ですが、こういう事は何も今に始まった事ではなく、実は昔からよくあった事なのです。チケット販売枚数から参加者数をある程度割り出す事の出来る興行巡業などとは違い、数万人以上の集会ともなれば、いちいち現場で実数をカウントする事など、実際は不可能なのです。
だから主催者としては、動員予定(見込)数を基に、当日現地の混み具合や上空から撮った航空写真の映像から経験的に過去のデータと照らし合わせて、「だいたいこんなモンだろう」と腰だめの数で把握するしかないのです。その中には当然、多少のサバ読みもあるでしょう。これには右派・左派系の違いはありません。
その一方で警察としては、警備や交通規制の必要もあるので、混雑が予想されるであろう時間帯・地点について、事前に計数機を使って参加人数の予測を出す必要に迫られます。これは参加のべ人数に重きを置いたものではなく、あくまで当該地点での通過人数を主眼とした予測数なので、主催者側のサバ読み数よりは常に少な目な数になります。その中には、事態を過小評価しようとする国家権力の意向も、当然反映されているでしょう。
一昔前なら、こんな事は新聞の読み手もメディア・リテラシーの作法として当然織り込んだ上で、その上で記事を読みこなしていたものでした。しかし近年は警察側が参加人数を余り公表しなくなった事もあって、主催者発表を「額面通り」受け取る風潮が出て来て、やれ捏造だ何だと騒ぐ輩が増えたようです。
しかし、若し仮に参加者数が少ない方の4万人強だったとしても、全県人口137万人の離島県でそれだけ集まったのなら、大したものだと思います。それを産経みたいに、こんな広く世論に事の是非を問うべき内容を孕んだ政治ニュースを、第一報をたった二段の三面記事だけで済ませて、後はコラム「産経抄」その他で難癖付のオンパレードばかりというのでは、とても公平な報道姿勢だとは思えません。
ところが実際は、当初主催者が予測していた5万人を遥かに上回る11万人強の参加で、県民集会は成功したのでした。会場に向かうバスは始発のターミナルで既に満員で、途中の停留所からはもう乗れない状況が続き、道路も大渋滞だったそうです。会場周辺からもあふれ出た人たちは、近くのビルのフロア・階段・屋上などに上がって集会を覗き見たそうです。集会が終わってからも会場に押し寄せる人の波が続いたとの事です。これらの人たちも参加出来ていたら、集会は15万人規模にまで膨れ上がっていた事でしょう。
そして、集会は沖縄本島の宜野湾海浜公園だけではなかったのです。離島の宮古島や石垣島でも、当該県民大会と同趣旨の郡民大会が、それぞれ数千人規模で開催されていたのです。この人数までカウントすると、最終的な参加人数はどれくらいになるでしょうか。
集会の性格やその広がりも特筆すべき事でした。沖縄県議会で二度も全会一致で抗議決議が上がり、県下41の全市町村議会でも抗議決議が為され、県民集会には保守系の知事・県議会議長や、自民党・公明党も含めた全政党関係者、市町村長・議会関係者・教育長・PTA会長・行政区長などの行政関係まで含め、官民総がかりの参加が為され、地元バス会社も会場へのバス代を無料にして、集会をバックアップしました。この取組みが、何で三面記事の僅か二段切り抜きなのですか。そして、それを「タカリ」と貶めて終わりとするに至っては、余りにも県民をバカにした話です。
チャンネル桜の「タカリ」発言の中には「自民党政府が口封じの為に沖縄に飴玉をしゃぶらせ続けた事で、県民のタカリ体質が助長された」なんて件もありますが、それなら尚更の事、基地・戦後補償問題の根本的解決を避け続けている自民党政府を非難すべきです。それを、徒に政府御用に走り一方的に県民を貶めるだけとは、お門違いも甚だしいと言わざるを得ません。
そもそも産経・チャンネル桜やそれを愛読・視聴するネットウヨク層たちは、先の自民党総裁選での麻生候補の秋葉原街頭演説に集まった聴衆の数も主催者陣営発表と警察発表とで大きく乖離している事や、産経新聞自身が押し紙(最初1ヶ月の無料サービスや架空の販売部数)を新聞販売店に押し付けて公称販売部数を水増ししている(これは他紙も同じだが産経は特に酷い)事には何も言わず、沖縄の事ばかりを槍玉に挙げていますが、これこそ、産経が他紙を揶揄する時に使う常套句「ダブル・スタンダード」の最たるものではないですか。
「県民大会参加者11万人捏造」説を声高に唱える産経新聞ですが、その政治姿勢が到底「公平・中道」と呼べるものでない事は、既に世間にも広く知られている事実です。その事は、50年代末の経営危機に際し政府・財界筋が直接資金援助に乗り出してきて以来、第二組合の社内育成・大量首切り断行を行う中で、60年代からは事実上の「自民党・財界の御用機関紙」として機能してきたという、その出自からも明らかです。チャンネル桜に至っては、言わずと知れたネットウヨク御用達のミニ・メディアでしかありません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A3%E7%B5%8C%E6%96%B0%E8%81%9E
こんな産経新聞やチャンネル桜ですが、それでも時には、北朝鮮・拉致問題や、東トルキスタンなど中国国内での少数民族弾圧の実態を報じたりなど、既存メディアが今まで余り取り上げなかった話題を提供してくれるので、それなりに意義はあります(但し、その産経も他紙と同様に北朝鮮賛美に走っていた時期があるのですが、それはさて置き)。しかしそれは「産経やチャンネル桜だから」ではなく、北朝鮮や中国の問題自体が持つ事実の重みが読者を突き動かしたからです。読者はそこからメディア・リテラシーを働かせて、デマや誇張や政治利用と思われる部分は割引き、真実と思われる部分のみを選択すれば良いのです。
しかしこの「県民大会参加者11万人捏造」説の様に、ここまでフレームアップに走るとなると、逆に自身の報道姿勢や存在意義を問われる事態になるとは、産経やチャンネル桜は思わないのでしょうか。特に沖縄県民を「タカリ、犯罪予備軍」呼ばわりしているチャンネル桜に至っては、従軍慰安婦を売春婦、ホームレスを怠け者、ワーキングプアを自己責任、原爆被爆者やハンセン病患者をタカリ、未解放民をエタ・呼ばわりするのと、同じ様なものではないですか。
私がこの件で憤っているのも、正にその点に関してです。自分にとって都合の悪い事・物・人に対しては、その存在自体を無視し相手の人格まで貶めようとする様は、まるでネットウヨクのヘイトスピーチそのものです。ここまで来ると、もはや彼我のイデオロギーや立場の違いで済まされるものではなく、それ以前に人間性の問題として捉えざるを得ません。同じ右派・財界系メディアの読売・日経新聞ですら、県民集会・集団自決・沖縄戦の評価はいろいろあっても、事実はそれなりの分量で以ってきちんと伝えている事と比べても、産経新聞の論調の異常性は際立っています。チャンネル桜については影響力が限られるのでまだ良いとしても、少なくとも産経新聞に関しては、こんなメディアが四大全国紙の一つとして通用しているのですから、日本のメディア劣化の程度は相当深刻だと言わざるを得ません。
この「11万人捏造」説を巡っては、朝日新聞と産経新聞との間で紙上論争が続いています。小泉政治・ネオリベ(新自由主義)礼賛の朝日新聞が「弱者の味方」であるとは更々思いませんが、それでも、小泉・安倍政治=ネオコン(新保守主義)・ネオリベ礼賛で何でも政府・財界御用の、ここまでフレームアップやダブル・スタンダード丸出しの産経新聞よりは、まだよっぽどマシです。こんなジャーナリズムとは縁もゆかりも無いイエローペーパー産経新聞など、市民の力で一刻も早く廃刊に追い込んでしまわないといけません。