アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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北朝鮮のファミリーマート

2007年10月10日 09時16分39秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍政治につい最近まで振り回されてきた日本とは対照的に、お隣の朝鮮半島では「冷戦体制からの脱却」を求める動きが更に新しい形で姿を現してきた様です。この一つの動きが、10月4日に発表された盧武鉉・韓国大統領と金正日・北朝鮮党総書記との共同宣言です。

 日本では、ブッシュ・ネオコンサイドからの北朝鮮・金正日批判報道の影響も有って、朝鮮半島といえばとかく「脱・冷戦」から一番縁遠い地域の様に思われてきました。しかし、この地域でも実は、古くは1972年の南北共同声明を皮切りに、最近では2000年6月15日の金大中・金正日による最初の南北首脳会談と、何度も「脱・冷戦」の動きがあったのです。しかしその都度、米日ネオコン・タカ派の台頭や北朝鮮政府の瀬戸際政策によって、その動きはいつも頓挫させられてきたのでした。

 それで今回の南北共同宣言ですが、字面だけで読む限りでは、「総花的で余り変り映えのしない内容だ」という印象がどうしても否めません。確かに共同宣言には「休戦体制に終止符を打って平和体制に移行する」という事が謳われていますが、これにしたって、今までの共同宣言にも個々の表現こそ違えども今までも何度も謳われてきた事だからです。更に今までよりは一歩踏み込んで、「共同漁労区域」の設定や「海州を中心とした西海平和地帯構想」、「南浦・安辺の朝鮮協力団地(開城工業団地の様なものか?)の建設」といった、より具体的な提案が列挙されていますが、これも経済改革・開放に消極的で軍事優先に傾斜しがちな北朝鮮政府の姿勢を考えると、「果たしてどこまで実現出来るのか」「単なる言葉遊びの域を出ないのでは」という懸念が拭えません。国内に多数の政治犯収容所を抱え住民に移動や職業選択の自由すら与えない今の北朝鮮の政治が変らない限り、つまり北朝鮮が民主化されない限り、これらは全て画餅にしかならないのではないでしょうか。

 では「全く今までと同じで変り映えがしないか」と言えば、実はそうとも言えないのです。確かに共同宣言の字面だけを見る限りでは総花的な印象しか拭えませんが、一歩目を現実に転ずれば、そこにはこの20年なり30年なりの朝鮮半島の変化が確実に見てとれます。

 まず80年代に、韓国では軍事政権が崩壊し民主化が成し遂げられました。次いで90年代に入ると、ソ連が崩壊し中国も改革開放路線を確固たるものにしました。そして、その頃から今に続くグローバリゼーションとIT革命の進展で世界は一体化し、北朝鮮も次第にその流れとは無縁ではいられなくなりつつあります。
 その中で、北朝鮮国内では経済特区の設立が為され、初期の羅先・新義州の試みは上手く軌道には乗りませんでしたが、次の開城(ケソン)工業団地の場合は一定の成功を収め、韓国を始め、日本を含む外国企業が進出し北朝鮮現地住民の雇用にも踏み出しています。今や韓国ソウルから北朝鮮の開城に向かう高速道路がDMZ(非武装地帯)を越えて伸びているのです。今回の盧武鉉大統領の訪朝でも、この道を歩いて休戦ラインを越えた事で話題になった所です。この地点に限って言えば、既に南北間で人・物・金の流れが形成されているのです。記事冒頭にあるのはウィキペディアに掲載されていた開城工業団地内のファミリーマートの写真です。北朝鮮の兵士が何とファミリーマートで買い物をしているのです。

 北朝鮮では多分ここだけにしかないのでしょうこのファミリーマートと、その前で談笑・休息する朝鮮人民軍兵士の、奇妙な組み合わせ。この北朝鮮のコンビニでは一体何を売っているのでしょうか。店内では北朝鮮の人々がファミマの制服を着て朝鮮語で「いらっしゃいませ~」とか言っているのかな。日本のコンビニ業界では、売っている食品の安全性や、バイトの低賃金や、本部・FC加盟店との間のロイヤリティを巡る訴訟トラブルといった問題が頻発している訳ですが、北朝鮮ではここでも店内に金親子のご真影が飾ってあって労働党が威張っているのだろうか・・・。いろいろ想像の種が尽きません。

 この新自由主義の象徴とも言えるコンビニや、韓国からの送電で稼動していて従業員も朝鮮労働党生え抜きの熱誠党員ばかりという、丁度日本で言えば江戸時代における長崎の出島みたいな感じの開城工団ですが、そのままでは北朝鮮の経済開放や民主化には結びつかないのは確かでしょう。しかし当時の出島も全く歴史的に意味が無かったのかと言えば、決してそうではありませんでした。杉田玄白の「解体新書」や平賀源内のエレキテルの実験、緒方洪庵の適塾に見られる如く、出島から伝わった蘭学の知識がその後の日本社会に与えた影響も決して小さくはありませんでした。

 北朝鮮の自由化・民主化を巡る議論については今まで、「国交正常化で市場経済が広まれば自然に民主化される」というものから「米国の力を借りて力ずくで民主化してやるのだ」というものまで色々ありますが、そのどれにも民衆があまり出てきません。出てくるのは自由化・民営化万能論者の守銭奴みたいな資本家か、ネオコン礼賛・靖国崇拝・弱い者虐めの2ちゃんネットウヨクみたいな御用政治家ばかりです。そのどちらが「民主化」を主導して仮に成功したとしても、それは真の民主化とは程遠いものになるでしょう。
 いくら外との交流が深まっても、それが一方通行に終わり、人民に双方向での移動や職業・人生選択の自由が保障されなければ、とても真の開放とは言えないのは、かつての帰国事業の例からも明らかです。北朝鮮民衆自身が双方向に向かう自由を求めて立ち上がってこそ、初めて真の民主化が達成されます。それを準備する役割を開城のファミリーマートが果たせてこそ、初めて「出島」としての意義があったと言えるのではないでしょうか。

(参考資料)
・特集 2007南北首脳会談(韓国・連合ニュース)
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/ikst/9100000001.html
・南北関係発展と平和繁栄に向けた宣言全文(同上)
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2007/10/04/0900000000AJP20071004003900882.HTML
・北朝鮮が対外政策を「先経政治」に、専門家が指摘(同上)
 http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2007/10/08/0200000000AJP20071008002600882.HTML
・韓国“平和定着を重視”/南北首脳会談/軍事境界線 徒歩で/盧大統領「民族の苦痛解消」(しんぶん赤旗)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-10-03/2007100307_01_0.html
・金正日, 韓国人拉致被害者はいない…自ら越北(デイリーNK)
 http://www.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk01300&num=1254
・南北共同宣言 「平和繁栄」と言うなら(中日新聞・社説)
 http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2007100502053971.html
・人権を置き去りにした南北首脳会談(朝民研)
 http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/10/post_213.html
・もう一つの非融和的関与政策論(同上)
 http://www.asiavoice.net/nkorea/2007/06/post_198.html
・開城工業地区(ウィキペディア―開城):例のファミマの写真もここに有り。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E5%9F%8E
・NHKスペシャル「北朝鮮帰国船~知られざる半世紀の記録~」
 http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=300&date=2007-10-08&ch=21&eid=3924
コメント (3)
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