マンガでわかる永続敗戦論 | |
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朝日新聞出版 |
白井聡さんの「永続敗戦論」講演会に参加した事を前々回の記事で書きましたが、その時に、以前、所長と社員登用試験の件で休日にお会いした時に、所長が安保法制の強行採決を強く非難していた事を思い出しました。そこで、ちょうど上記の「マンガでわかる永続敗戦論」を読み終えた所だったので、この本を所長にも読んでもらおうと、思い切って先日、職場で渡しました。ついでに、前回記事の内容をコピーした物も、記事そのもののコピーを渡したのではブログでの会社批判記事の存在が発覚してしまいますのでw、それをワードに落とし込んだ物を一緒に、「こちらもご参考に」という事で渡しました。
既に年末繁忙期に突入していたので、「何もこんな忙しい時に渡してくれなくても」と所長から言われるかもと少し心配でしたが、意外にも快く受け取ってくれました。所長はこの時も、新国立競技場建設問題で、結局、当初案に採用が決まった事に対して、「あの設計見直し劇は一体何だったのか?所詮は安保法制の目くらましだったのか!」と憤っておられました。所長からはまだ本を返してもらっていませんが、返却の折にまた感想でも聞いてみようと思います。
ところで、上記の漫画本ですが、非常に重宝しています。著者の白井さんは、元々は左派に属する人なのでしょうが、石橋湛山や江藤淳、福田恆存(ふくだ・つねあり)などの一部右翼人士についても、戦後民主主義の欺瞞を突いたという点で、左派同様に評価しています。実は12月20日の講演会場でも、自分を「サヨク」呼ばわりする一部参加者からの感想文に対して、「私は左翼も右翼も評価すべき点はきちんと評価している。それを上っ面だけ見て、サヨクやウヨクなぞとカタカナで罵倒するような傲慢な態度は取らない」と、その場で一喝していたのです。そういう奥の深い論考を、どうやったら職場の読者にも分かりやすく説明できるだろうか分からず、ブログ記事にする際もなかなか筆が進みませんでした。それを分かりやすく漫画にしてくれたので、非常に助かっています。
格差固定 下流社会10年後調査から見える実態 | |
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また、それと同じ頃、休日に私がブログを書いている所に、親父が亡き母の仏壇にお茶を供えたついでに私の部屋にやって来て、毎月の貯金額について「月々1万円余では少ない、もっと貯金するように」と言って来ました。そこで私は、「子供じゃあるまいし、何でそんな事まで親父からあれこれ言われなければならないのか?」と思いつつ、「確かに俺の給与は毎月17万円ぐらいあるが、税金や社会保険料を差し引けば手取りは13~14万円ぐらいにしかならない。そんな中で、3万も4万もどうやって貯金しろと言うのか。今や全然蓄えのない世帯も少なくないのに」と言い返すと、更に親父が「お前、もうこの歳になって、たったそんな少しかもらっていないのか?」と言ってきました。
さすがに、その差別的な物言いにはカチンと来たので、「今や、これだけ格差・貧困問題が言われるようになった中で、今頃一体何を言っているのか?そもそも、何で日本が今のような格差社会になってしまったのか?全ては自民党政治のせいであり、何も考えずにせっせと選挙のたびに自民党や維新の会に投票してきた親父のせいじゃないか!」と言ってやりました。そうしたら、親父はもう黙って何も言えなくなってしまいました。
その他にも、「社会保険料を払っている以上は正社員じゃないのか?契約社員は正社員じゃないのか?」とか、余りにも浮世離れした発言を繰り返していたので、その日の夕飯の席でも、「俺は慢性腰痛の持病を抱えているが、国の医療費削減政策の為に、今や整骨院でも腰痛治療に健康保険は使えなくなってしまった。全て実費払いなので、その治療費だけでも毎月2万円以上もかかっている。自民党はアベノミクスで景気が回復したように宣伝しているが、あんな物、株価バブルで無理やりインフレ起こしているだけで、仮に一時的に景気が上向いても、潤うのはバブルの恩恵に浴する事のできる一部の大金持ちだけだ。庶民には物価高と国の借金が押し付けられるだけじゃないか!そんな世の中にしてしまったのも、自民党の政治家であり、それを支持してきた親父じゃないか!」と一気にまくし立ててやりました。
この時も、親父は何も言い返すことが出来ませんでした。昔、私が大学生で親父も元気だった頃には、こんな話題になったら、いつも親父と取っ組み合いの喧嘩になっていたのに。これもまた「永続敗戦レジーム」の名残なのでしょうか。今度また親父が浮世離れした事を言ってきたら、この上記の本を薦めてあげようと思っています。
ただ、そういう親父ではありますが、それでも親父自身も少しずつ変わろうとしているようです。数年前まで携帯も触ろうとしなかったのに、今やパソコンまで買って地元商工会議所主催のPC講習にも通うようになりました。
今日も各紙の朝刊一面には、日韓外相会談で慰安婦問題に決着がついたかのような記事が載っています。「日本側が戦時中の従軍慰安婦の件で謝罪を表明し、日韓両国合同で慰安婦支援基金を作り、そこに日本側が10億円の運営資金を拠出する代わりに、もうこの慰安婦問題については、両国のどちら側からも再び蒸し返すような事はしないでおこう」というのが、外相会談での合意内容のようです。
しかし、おかしいと思いませんか?この慰安婦問題も、元々は日本による過去の侵略戦争や植民地支配によってもたらされたものです。いわば、日本側は加害者であり、韓国側は被害者です。日本が、今のドイツのように、この問題に対してしっかり向き合ってきて、謝罪も賠償も十分行ったにも関わらず、韓国側がこの問題を口実に無理難題を吹っかけてくるというならまだしも、実際は日本側の謝罪もおざなりで、謝罪した尻から再び慰安婦を貶めるようなヘイトスピーチを政治家が繰り返している中で、いくらこんな合意を結んでも、また誰かがぶち壊して振り出しに戻してしまう可能性が高いでしょう。現に、尖閣問題でも、せっかく当時の周恩来と田中角栄の間で棚上げ合意に至ったのに、石原慎太郎がそれを全てぶち壊してしまったではないですか。
先日、ワタミの過労死裁判で、ワタミが遺族に賠償金を払い、長時間労働撲滅にむけての施策を講じる事で、遺族と和解に至りましたが、この問題も、ワタミを許すかどうかは遺族が決める事であって、第三者やましてや加害者のワタミが、遺族に対してあれこれ言える筋合いなぞありません。そうであるにも関わらず、この慰安婦問題に限っては、謝罪や賠償よりも「蒸し返さない」事が優先されるのは、どう考えてもおかしいでしょう。そうやって、本筋の議論から逃げ回って、やり過ごす事ばかり、適当にお茶を濁す事ばかり考えているから、いつまでたっても「永続敗戦レジーム」から抜け出せないのです。
今日は年末繁忙期の中での貴重な公休日。明日からまた正月明けまで慌しい日々が始まります。このブログも、多分この記事が年内最終の更新となるでしょう。では、よいお年を。
石橋については、岩波文庫から彼自身が書いた評論集が刊行されていますから、ぜひ読まれるべきだと思います。
戦前日本の帝国主義、領土拡張主義が実利を齎さず、国際的にも通用しなくなるので、朝鮮半島や台湾の独立を認め、中国やロシアに平和主義で臨むことが日本の生きる道であると説いた論文です。