運動のシンボルであるヒマワリを持つデモ隊。このため、台湾では太陽花學運との呼び方もある。(以上、wikipediaより転載)
台湾における反TPP運動の高まりについて書かれた下記二つのレポート記事を緊急転載します。
同国での学生による国会占拠のニュースについては私も聞いていましたが、詳細については、メディアが殆ど取り上げない事もあって、今までよく分かりませんでした。下記のレポートを読んでよく分かりました。中国を米国に、台湾の馬英九政権を日本の安倍政権に、サービス貿易協定をFTAやTPPに、その強行採決を日本の秘密保護法採決のそれに当てはめれば、台湾での闘いがそのまま日本にも直結する事は明らかです。
但し残念ながら、今の日本には台湾の様な学生運動の盛り上がりは見られませんが、かつては日本でも同様の盛り上がりがありましたし、今もそれは反原発運動などの形で現れています。それに対する政府の弾圧のやり口もそのまんまです。台湾での反搾取闘争を当ブログも断固支持します。
サービス貿易協定は1%の大資本による99%の富の収奪(IWJ)
占拠の発端となった「サービス貿易協定」とは、台湾と中国の間で、金融、保険、広告、宅配、汚水処理、ホテル、レストラン、娯楽・スポーツ施設、運送、クリーニング、美容、葬儀施設など、幅広いサービス分野で、「互いの市場を開放する」協定である。しかし実際には、中国側の開放は地域が限定されていたり、台湾企業の中国への事業参入のハードルが高いなど、極めて台湾に不利な不平等条約となっている。
例えば、中国の起業家は台湾の銀行にお金を払うことで、3年間台湾に移住でき、ビザの更新も無制限に行うことができる。一方、台湾の起業家も中国への移住が可能だが、その場合は会社の株式の50%以上を中国政府に渡さなくてはならない、などの条件が盛り込まれている。豊富な資本を持ち生産から小売りまでが一体となっている中国企業が、台湾の中小企業の生存を脅かすのは必至だ。
こうした内容から、日本の報道では「台湾が中国に飲み込まれる事に反発した学生らの行動」という報じ方がなされている。確かに抗議には台湾独立派の姿も多くみられる。しかし、この問題の本質は少し異なる。
18日に立法院を占拠した学生らは宣言の中で、「同協定への反対は、『相手が中国なら何でも反対』ということではない。同協定の最大の問題は、貿易自由化が大資本にだけ利益をもたらすことにある」と訴えている。さらに、「同協定は、中国と台湾が統一するか独立するか、という問題ではなく、少数の大資本家が多くのの農民と労働者と中小工業者を飲み込む階級問題であり、台湾の若者の未来を奪う生存問題だ」と語っている。
馬総統は23日の記者会見で、「同協定の遅れは、台湾のTPPやRSEP(東アジア地域包括的経済連携)参加にも影響をおよぼす」と訴えた。つまり、馬政権にとって「サービス貿易協定」は、TPPやRSEPへの通過点に過ぎない。その先にあるのは、1%の大資本による99%の富の収奪である。
学生らも宣言の中で、「協定の本質は、WTO、FTA、TPPと同じだ」と指摘している。台湾が直面するこの事態は、TPPで米国に不平等条約を迫られる日本、米韓FTAで不利な条件を飲まされた韓国、そして国内1%の超富裕層が残りの99%の富を食い物にする米国など、世界中で行われている「多国籍資本による経済植民地化」という構図で共通している。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/131463
教育学者・佐藤学先生による台湾速報(2014.3.24-25)。(内田樹のTogetter)
台湾にたまたま招聘中の佐藤学先生から生々しい速報が届きました。日本のメディアではあまり報道されていないこともありますので、ネット経由で現地の情報をお知らせ致します。
「台湾からの速報です。昨日から台北に来ていますが、こちらでは馬英九が中国との貿易協定を強行採決する動きを示したことから、中国資本によって台湾が植民地されることを怒った何万人もの学生たちが、立法院(国会)に押しかけて占拠し、立法院の中に100人が常駐してその外を1万人の学生が守る状態がすでに一週間続いています。一週間とはいえ、国会は学生の支配下にあります。学生たちの中心は台湾大学と精華大学の学生で、この二つの大学の学長と教授の多くは学生支持を言明し、二つの大学は学生が自由に行動を行えるよう、1週間の休講を昨日宣言しました。
さらに23大学の学長が学生支持を表明しています。機動隊が全国から動員されているのですが、その機動隊も非公式ながら学生支持を表明しています。すごいことが起こっています。
ところが今日になっておそらくは国民党の謀略ですが、市民と学生の過激派が暴力的に行政院を占拠し、これを口実に武力による制圧が必至という危険な状態です。私は、二つの大学の招待講演と大学院の集中講義で昨日から台北に滞在しているのですが夜は立法院を訪れて学生に支援のエールを送っています。(注:この行政院占拠は過激派によるものとの評価に対しては別の識者から異論が提起されている)
学生たちは整然と行動していて、佐藤先生はその秩序立った行動に歴史の転換点に比すべき意義を感じておられるとのことでした。大学が学生の行動を公的に支援するということは日本では絶対に考えられない事態ですが、それについての報道は僕はまだ見ておりません。報道されているのでしょうか?
台北の佐藤学先生から続報が入りましたので、お知らせします。「22日土曜日から台北教育大学大学院の集中講義、淡江大学と台北教育大学と台北市教育局の招待講演で台北に来ています。到着直後、学生が占拠している立法院に出かけ、その後3日間情報の収集をつとめました。まず報告したいのは日本の報道はこの事件に無関心ですし、「学生の暴動」として誤った報道を行っています。この事件は、もともと馬英九大統領が独裁的に中国との自由貿易協定(TFA)を結ぶことを強行採決したことに怒った学生たちが立法院を包囲し、かつ100人の学生が立法院内に入って占拠したことです。
中国との貿易協定が締結されれば、中国資本が台湾を乗っ取るのは必至で、この闘いは文字通りの「売国奴」(馬英九・国民党)と「愛国者」(学生・市民)の対決になっています。22日に立法院を訪問して感銘を受けたのは、学生たちの冷静で誠実で思慮深い闘い方でした。
彼らの中心は台湾大学と精華大学の学生たちで台湾のトップエリートたちです。立法院の内部には学生が100人、そして学生の統制下で機動隊が40人が入り、一定時間で交代しています。機動隊も学生たちの行動には非公式ですが賛同を表明していて、お互い交代時には拍手で相手をねぎらう関係でした。
この立法院の周囲には、日によって異なりますが、数千人から5万人の学生と市民が座り込んでおり、立法院の学生たちを守っています。この状態で、月曜日から立法院の占拠が開始され、国会は機能停止になり、すでに1週間になります。静かな緊張状態が続いていましたが、一昨日の日曜日に馬英九が国際記者会見を行い、学生たちを違法者と批判し、まったく対話に応じないと宣言したことから、その夕刻、学生の一部が行政院への突入を呼びかけ始め、立法院の学生たちは制したのですが、馬の対応に憤った過激な学生たちが強行突破于して行政院を占拠しました。
その夜11時から機動隊の実力行使によって行政院の学生たちの逮捕と排除が7派にわたって暴力的に行われ、朝には、行政院の占拠は解かれました。その間に学生の160人以上が負傷しています。この行政院の占拠には、私の見たところ、明らかに暴力団の一部が紛れ込んでいたと思います。
その一部の暴力団が行政院の内部の破壊行為を行い、それがテレビや新聞で報道されました。内部の破壊は断じて学生の行動ではありません。そのことは行政院と立法院の内部の学生たちから情報をえています。この行政院の制圧からこちらでもメディアの報道は「学生の暴動」というニュアンスを強めています。
昨日、テレビ局が世論調査を行って報告したのですが、貿易協定には台湾国民の63%が反対。行政院の学生の途中には58%が反対し31%が支持、行政院の学生たちの機動隊による実力行使による排除は58%が反対し31%が支持です。
重要なのは、この世論調査で学生たちの立法院の占拠に対しては51%が支持し反対は38%であり、さらに立法院の学生の要求に応じて馬英九大統領は学生との対話に応じるべきだという意見は835(注:83%の誤りか?)に達していることです。すなわち、過激な学生たちの行政院の占拠について国民は支持していないが、 それに対する機動隊の実力行使に対しては反対しており、立法院の学生の占拠は国民の多数が支持し、学生の対話の要求は国民の大多数が賛同していることです。
さらに、台湾大学と精華大学は学長が学生支援を表明し、すべての授業を一週間休講にして学生たちに国会(立法院)の集会とデモに参加するよう呼びかけましたし、国内23大学の学長が学生支持を表明し、著名大学の多くが大学を休講措置にして学生の行動を支援しています。(注:23大学→53大学に訂正との追記あり)
「台湾を愛する」という旗が集会では無数に掲げられています。休講措置を学長がとっていない大学では、教授たちが立法院で授業を行って学生を支援しています。私のいる台北教育大学も月曜日から水曜日は学生が校内にほとんどいなかったようです。
ほとんどの学生たちが、立法院の集会とデモに参加していたのです。おもしろいのは、集会の周りに台北の風物の夜市の屋台が並んでいることですが、これらの屋台も夜市の業者の学生支援の行動で、無料で食べ物を提供しています。
立法院の学生たちは、実に思慮深く誠実に行動していて、誰もが「学生たちを尊敬する」と語っています。こうして7日目を迎えました。日本の報道そして一昨日から台湾のテレビ報道も行政院の機動隊の実力行使の場面を中心に報道していますが、行政院の占拠は一部学生の突発的行動であり、政治的には意味がありません。政治的に意味があるのは行政院ではなく立法院であり、大多数の学生と市民は立法院の学生たちの賢明な行動を見守り支援しています。今後の推移は予測がつきません。
立法院を占拠している学生たちに実力行使が行われると、国民に潜在している歴史的な怒りに火がついて台湾は内乱状態と革命状態になるでしょう。そのことを馬も国民党も知っているので、このままの膠着状態が続くでしょう。最後に、学生たちの賢明で勇気ある行為を讃えたいと思います。」(以上)
http://togetter.com/li/646735
そもそも今日の「生産力の発展」は、疎外された形でのものでしかないし、戦争や犯罪なども19世紀的段階から様相が全く異なって来ているから、そういう時代的制約のある見地を教条化し絶対化することは、反弁証法的な物の見方に転落してしまう。そういうのは、かつて「戦争の進歩性」命題にしがみついていたkazhikたちの妄言や、TPPを自由貿易と等置してマルクス教条でTPPを正当化する連中の「具体的事実の具体的分析」能力の欠如として破綻している。原子力平和利用論と同質の謬論です。
だけど、一方では民族自決主義にも注意が必要だよね。クリミアやカタロニア、ケベック、フォークランドなどでの「民族自決」論には、北朝鮮やシリアでのそれと同様にアトミズムが潜んでいる。
資本や国家のホーリズム(=全体主義)に反対するのと同時に、怪しい個人主義や国家(民族)自決主義にも警戒が必要なのが21世紀的現代社会だと思います。
難しいよねw
2014年3月21日
台湾緑の党声明「台湾政府による中国との貿易交渉について」
信愛なる緑の党のみなさんへ
学生が台湾の立法院(国会にあたる)占拠を始めて一週間、台湾緑の党の役員は立法院の内外で行われる連携行動に積極的に参加してきました。 私たちは全支持者に何らかのかたちで参加するように呼びかけました。 政治屋たちの利益誘導に対するこの「市民蜂起」は見過ごせない重要なものであり、緑の党は全面的に支持します。 私たちの事務所は立法院から2ブロックも離れていないところにあるので、誰もが立ち寄って、休憩をしたりシャワーを浴びたりできるように24時間開放しています。
台湾緑の党は、このずさんで性急な中国との貿易協定が加速されることについて、私たちの立場を以下のとおり表明します。
1、第一に、私たちはあらゆる国際貿易における交渉は透明な手続きによって包括的な法的枠組みのもとに設定されなければならないという立場を支持します。
2、国土のさらなる環境破壊を防ぐため、緑の党は現在争われているような中台間のサービス貿易協定を中止することを要求します。この協定によって公的財産である重要な公共サービスが民営化されてしまうからです。
3、台湾緑の党は、搾取を促進し貧富の差を拡大させる、いわゆる「自由貿易合意」の全てに反対します。 台湾政府はこれらの合意が現在の産業を危機に直面させている構造的要因であることに気づくべきです。 政府は地域経済を発展させ、持続可能なグリーン産業を促進する役割を果たすべきなのです。
馬 英九政権は「もし私たちがこの中国との貿易協定に署名しなければ、台湾は韓国に遅れをとってしまう」と台湾の市民を脅してきました。学生による占拠が6日目となっても尚、同じことを言っています。
彼らは学生や市民が言っていることについて合理的に考える能力を完全に失ってしまったのではないでしょうか? 台湾の経済は長期にわたり、安い労働力、安い地価、安い設備によって支えられてきました。このような状況では技術革新や創造性へのインセンティブは生じ得ません。 それがいわゆる競争力消失の理由なのです。 このような目先の利益だけを追及する政策は長く続けられすぎました。 緑の党は政府に対し、中国経済頼みの浮足立った産業政策ではなく、社会や自然環境を破壊することのない持続可能な産業政策への転換を求めます。
4、緑の党は、現在の不公正な貿易協定に基づく世界経済ではなく、エコロジーな(=生態系維持が可能な)世界経済を求めます。 私たちは必ずしも中国との協働と貿易全てに反対するわけではありません。しかし、これから国や地域で取り決められる協定は当事者主権を守るものであるべきです。
(仮訳:緑の党国際部)
http://greens.gr.jp/world-news/10388/
次いで日本「緑の党」 の台湾政府による弾圧に対する抗議声明(談話)。この声明文の後に「参考資料」として上記の台湾「緑の党」声明へのリンクも張られています。
(注:尚、ここで言う「緑の党」とは、民主党から分かれた「新党みどり」ではなく、正式名称「緑の党グリーンズ・ジャパン」の方です)
2014/03/27
【談話】台湾政府の市民行動への弾圧に抗議する
-台中及び日中関係の未来に必要なのは、「強権と新自由主義」から「民主主義と緑の経済」への転換-
緑の党グリーンズジャパン 共同代表
中山均、すぐろ奈緒、橋本久雄、長谷川羽衣子
台湾(中華民国)政府が中国政府と進めているサービス貿易協定に対し、学生たちが、この協定プロセスの不透明さ、非民主性に抗議するため、3月19日21時より台湾国会の占拠を続け、現代台湾において最も注目すべき民主化運動となっています。台湾の国会は3月24日にこの協定を否決しましたが、学生たちは政府による協定撤回を求め、引き続き国会占拠を続けています 。
これを受け、私たちの仲間である台湾緑の党は3月21日、学生たちの行動に対して暴力的行動、抑圧的行動、とりわけ軍事的行動を取らないよう、台湾政府に強く求め、また与野党に共同で台湾が抱えている苦難を協議し、台湾の民主主義を再生させるよう訴えました。
私たちは、この台湾緑の党の声明を支持します。
同時に、この台湾の現状は、日本にとっても他人事ではありません。日本政府が進めているTPP協定においても、やはり重要な情報が市民にひた隠しにされています。
さらに、長い国民党独裁時代を経て民主化に進んでいる台湾とは逆に、日本で昨年末成立した特定秘密保護法は、国家の秘密を更に増大させ、真実を知ろうとする市民に対する弾圧をもたらしかねないものです。
また、台湾の人々は中国のナショナリズムや軍事的脅威、覇権主義的姿勢に強い圧迫感を抱いており、それを無視してこの問題を見ることはできません。求められるのは、中台を含む東アジア地域の平和的共生や対等平等な経済関係です。その意味では、中国における官民のナショナリズムを煽り立てる結果となっている安倍政権の靖国参拝や歴史認識問題は、それに逆行するものと言えます。
私たちは台湾緑の党と共に、訴えます。
どの国との友好関係も、自国内の市民への弾圧によっては決してもたらされないことを。強権的な自由貿易主義から諸国民との友好は生まれず、諸国民が手をつないで新しい緑の経済、新しい友好関係を作っていく試みこそ求められていることを。
http://greens.gr.jp/seimei/10392/
今日のいわゆる「自由貿易」は、公的部門の解体などの問題の他にも農業分野で中山間地農業の破壊による①環境破壊と②食料生産体制の破壊を招く点などが重大だよね。現在の地球・人類社会は、ツバルの消失など想像も出来ず、地球人口もたかだか10億人足らずだったマルクス時代の19世紀とは根本的に前提条件が異なるんだけど、マルクスやレーニンの解釈学しか興味をもたない20世紀型左翼理論はこういう点についての関心が遅れたよね。
これも、後進国ロシアで世界最初の「社会主義」が誕生したことによる悪影響かな?「社会主義」を僭称する中国での環境問題の軽視なども、その流れだと思う。
しかし一方、20世紀型緑派に潜む経済学的ロマン主義にも問題があるよね。20世紀型緑派は、悪しき科学技術主義や悪しき経済優先思想を批判するあまり、事実上、ナロードニキや前近代的ユートピアンの社会論に接近している。つまり、資本主義の必要悪的な二面的性格(=矛盾)を見ることをしようとしない。彼らには、真のオルタナティヴを展望出来るだけの経済学的・哲学的な土台が無いんですよ。
人類はやはり、マルクスの見出した方向を歩み続けるしかない、ということでしょう。