脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

脳腫瘍

2010年10月16日 | 画像だけにたよらない

今年の1月の「失語症の検査」

http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20100126   

3月の「緩徐進行性失語その2」http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20100313
をクリックして読み返してみてください。
この方のその後の情報が届きましたので報告します。
実は亡くなられたのです・・・

 

 

全体を整理すると
①脳機能検査の結果から「失語症状がある」
そして家族もそのことを納得している。

②「急激な変化ではないし、言語野を損傷するような病気も事故もしていない」
つまり、器質障害がない。
MRIは正常と言われている。(このことを書き忘れていました)

③変性疾患としか考えられない。
感覚性失語症から発症しているが、徐々に失語が重くなっていくことは覚悟しなくてはいけない。失語は重くなっていっても、それに引きずられる形での脳の老化の加速だけは食いとどめよう。(これが3月の報告内容です)

「生活の中で何か変、今までと違う人のよう(お嫁さんは言葉のキャッチボールができないという見事な表現をしていましたね)。でもお医者さんはMRIを見ても何の異常もないといわれる」
「保健師さんに相談したら、生活の中で変と感じていることをとてもよくわかってくれた」(検査結果が失語症を意味していたので、ご本人ができないことを言い当てることができる)

このような状況だったのです。
保健師さんから、状態の説明と生活指導をしてほしいということで、私が相談を受けたのです。

私は3月にご家族と会いました。
脳卒中や事故による失語症発症は急激なことが特徴ですから「急激な発症ではないこと」は確認しました。②は家族への聞き取りだったのですが、その前提に「器質的には正常」というお墨付きがあったのです。

報告の電話はこのようなものでした。
「あの後、直後の受診では相変わらず器質的には正常と言われたのですが、6月になって実は脳腫瘍が見つかりました。そして、あれよあれよという間に亡くなられたのです。数年前に乳がんを手術されていたこともわかりました」

「原発性脳腫瘍だったのですか?それとも転移性脳腫瘍?」

「それは…はっきりしませんが」

エイジングライフ研究所として今回のことを考えてみました。
MRIで見つからないものが、二段階方式の手技を用いることでわかる!
そういうことですよね。
器質よりも機能の方が大切なのです。わかりやすい言葉でいえば「見た目より働き」

検査結果が通常の脳の老化が加速されたものでなく言葉の障害がはっきりしたら、エイジングライフ研究所二段階方式では次のように考えます。
以下は1月のブログから転載

「なぜこの障害が起きたのかは、生活歴から聞き取っていくことになります。
病気はしなかったか。けがはしなかったか。
脳の障害は、そのほとんどがある日突然起きてきます。病気や事故がその原因です。
この人の場合は、まったくそのようなことがなかったのです!
徐々に言葉の障害が起きてきて、だんだんに悪化してきている・・・
これは変性疾患を疑うしかありません。
緩徐進行性失語(最近は原発性進行性失語ともいいます)と考えることになります。二段階方式では、このような場合は専門医療機関受診ということになっていますよね。」

追加訂正します。
今回のケースは12月に医療機関受診してMRI=正常というお墨付きがありましたので、脳腫瘍は除外していたのですが、書いていませんでしたね。
もしまだ、受診していなかったとしたら当然「変性疾患」とともに「脳腫瘍」も考えなくてはいけないのです。脳腫瘍の場合は、ある大きさになるまでほとんど無症状でいて、症状が出始めると次第にそれが強くなってくるのです。

その差を決めるのは、CTやMRIなどの器質検査です。
「脳腫瘍ならすぐにはっきりと見つかる、変性疾患は機能には明らかな障害があっても画像で見えるようになるまでは何年もかかる」はずですが・・・
脳腫瘍がこんなにも画像で見つからないとは!私には新しい発見でした。

生活指導が進むうちに明るくなっていったお顔が忘れられません。
真剣に聞いてくださったご家族のお顔も。

短い期間でしたがご家族の皆さんにご本人が失語症でどんなに困っていらっしゃるかを説明してあげることができたこと、失語症があってもできることを具体的に伝えてあげられたことは、少しの光だったのではないでしょうか?
ご冥福をお祈りします。


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