二段階方式では
A:脳機能検査
B:生活実態
C:生活歴
この三条件から、認知症の種類・レベルなどを理解します。
そして、ナイナイ尽くしの生活のために脳が老化を加速させていったいわゆる「アルツハイマー型認知症」の場合には、どのような生活上の変化が認知症を引き寄せていったのかを明らかにしたうえで、どのようにして改善させていくのかを提示するのです.
昨年末に送られてきたケースが、あまりにも典型的なパターンでしたから復習していきます。
81歳の女性の方です。
まず、A:脳機能検査
大脳後半領域のテストMMSの得点は26点/30点。できなかったのは想起がマイナス3点と計算がマイナス1点の計4点。(まず、これから典型的!)
一応合格ですね。
ところが前頭葉テストになると、立方体透視図模写はできません。動物の名前を言ってもらうと1分間に8個ただし繰り返しが2個という結果です。(これは不合格)
さらにかなひろいテストに至っては、2分間についた丸の数は5個。見落とした数は16個。内容把握も曖昧でした。
結論としてA:脳機能テストの結果は「小ボケ}
こうしてみると、同じように見える図形の模写でも5角形相関貫図に比べて、立方体の模写は難しいことがよくわかりますね。
その理由は前頭葉機能がうまく働いているかどうかにかかっています。
立方体の奥行き知覚そのものも前頭葉機能が働いた結果ですし、次には反転していく奥行きの方向を一方向にとどめなくては、この図形は描けないのですが、その時にも抑制という前頭葉機能が発揮されなくてはいけないのです。
このA4版白紙の使い方からは、5角形相関貫図は描けて立方体透視図が描けないということの他にも、いくつかのこの人を理解させる情報があります。
1.名前が用紙のまん真ん中。
2.用紙全体を使っている。
この2点からはエネルギーの大きな人だろうという予想がつきます。
3.文章は正確に書けているように見えますが
「ぼげきている」は「ぼけきている」か「ぼけがきている」のはずですね。
このような間違い方は、もちろん失語症のように脳機能のの異常からでもおきますが、本来ならば完全正答になる脳機能を持っているはずなのに、「ちょっと、つい、うっかり、間違ってしまう」場合もあるのです。
このようなことは小ボケレベルでよく起きてきますから、この「文を書く」の時点で小ボケの可能性があることを考慮しなくてはいけません。
B:生活実態
小ボケの人の場合は、生活実態を知るための30項目問診票で、1~10までの症状のうちに4症状以上の自覚が必須条件になります。
⑤⑦⑧⑨ここまでならまさに小ボケにぴったりですが、さらに⑬⑭にも丸が付いていました。
よくよく尋ねると最近二度ほど失敗したことを厳しく自己評価していたことがわかりました。
このように脳機能レベルが小ボケで、生活実態を小ボケ以下に自己評価することは割合によく見られます。逆に言うと脳機能レベルが中ボケになって中ボケに自己評価で丸をつけることはないのです。(これも原則通り) 箱根ガラスの森から大涌谷
C:生活歴
3年間、この人らしくいきいきと生きてこなかった結果が、この脳機能を生んだのだと、二段階方式では考えます。
言いかえれば、3年前にこの人の生活が大きく変わってしまう生活上の変化が起きた(そして、その結果それまでとは全く違う生活実態になってそれが続いた)ということですから、3年前に絞ってその変化を聴き取っていきます。
「3年前に起きた生活上の大きな変化と言えば、同居の婿が退職して家にいるようになった」と即答されたそうです。
多分それで正答なのでしょうが、でも、安心してはいけません。
婿が退職してこの人の生活がどのように変わったのかを聞きとらなくてはいけないのですよ。
箱根富士屋ホテルを望む
30代で夫を亡くしてからは、郵便局に勤めて一人娘と義母の生活を支えてきた。
母屋に娘一家を住まわせて、退職後は、母屋の裏に離れを建てて義母と生活。義母は半年後死去。娘は公務員、婿は警察官だったので家事と孫の面倒を見てきた。
退職後は書道、三味線、編み物など多彩な趣味を楽しんでいた。
婿の退職までは、自分で自転車に乗って買い物をし食事の支度もしたが、退職後は買ってきてもらったり車で連れて行ってもらったりになった。面倒なのでお弁当でいいとする日も増えた。
こうして話してもらっているうちに
「婿が毎日いるようになってとても気を使うこと」
「娘はまだ働いているのに、婿が働いていないことをよく思っていないこと」
「警察官だったせいか、硬くてうるさくて、監視されているようで生活が楽しくない」と言うことがはっきりしてきました。
ここまで聞きとるようにしましょう!
テスターも納得できますが、何より小ボケの本人が「その通り!」と思うはずですから。
このケースの場合なら、元来が負けず嫌いでがんばりやさんですから、ここまでのやり取りの中で胸のつかえが下りた気分になるものです。
指導内容はこのように書かれていました。
「食事の支度は頭の体操だと思って工夫しながらいろいろなものを作りましょう。止めてしまった趣味の中で再開できそうなものをまたやりましょう。保健センターの貯筋体操にも涼しくなったら来てください。散歩もいいですよ」
もし追加するとしたら、
「この3年間の生活では、脳の使い方が足りません。そのために老化が早まって元気をなくしています。もっと楽しくもっと生き生きと生きることが脳の元気を取り戻すことですよ。そのために」を指導の頭につけることでしょうか。