今回の被災地への旅は、熊谷さんとの再会も計画に入っていました。
大船渡への道は、割合高台なので惨状を直接的に目にすることはありませんでした。津波の被害を大きく受けた中心地を過ぎ、そのままさらに山中に入っていく道は郊外型の店舗がたくさん並んだ新しい街並みです。そこから少し入ったところに、熊谷さんのおたくはありました。
敷地の中に花に囲まれたかわいいログハウスが「うさぎのしっぽ」
「縫い物とお花が好き」という熊谷さんの生き方が、形になったログハウスです。
夢にあふれた室内。思わず手に取ってみたくなるような作品たち。
その作品もパッチワークの作品から人形たち、リボン手芸などなど多岐にわたっていて、右脳の豊かな人たちの素晴らしさを、改めて認識しました。
うらやましい限りです。
すべてがお弟子さんたちのための見本で、
「売り物は一点もありません。もちろん私が死んだら売るといいかも。全部で、さぁ700点はあるでしょうか」と笑っていました。
「仮設住宅で、みんなで手芸を楽しむ」ということは、いわば認知症予防教室の定番ともいえるカリキュラムです。
現状では、ありあわせの材料で、時間つぶしのようなことがまかり通っていると思われます。南相馬市で多くの仮設住宅を見学してきた後ですから、それすらできるところのほうが少ないだろうということも想像できます。
でも、「こういうものを作りたい」という気持ちを目覚めさせてあげたい。
目覚めている人には、提供してあげたい。
出来上がった作品が自慢できるようなものを作らせてあげたい。
布の色や材質の組み合わせそのものが楽しめるものを作らせてあげたい。etc.
そういう作品の材料は費用が発生するでしょう。
熊谷さんはプロですから、仮設に行って教えてあげるとなると報酬が必要になります。
ところが、仮設ではお金のやり取りはできないことになっているそうです。(もちろん、その趣旨も理解できます)
世話人の立場の人たちは、眼前の問題解決すらままならないかもしれません。
認知症に限らず、予防活動はどうしても後回し・・・
でも、認知症の予防は、正常者に対して行うのが最も効果的です。
正常であるほど、かわいいとかおしゃれとかシックとかを求めるものです。
正常な方にも脳を生き生きと使う時間は不可欠なのですよ。
熊谷さんのような指導者を必要とする人たちがいることと、その方たちに働きかけることの有用性に早く気付いてほしいと思います。
金銭の授受が認められないなら、熊谷さんを派遣できるようなNPOはないのでしょうか?
「ボケてどうする!」
ボケる前に何をなすべきかを高齢者に納得させて、その状況を用意してあげる方法は、どこに見つけることができるのでしょうか?