脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

またまた認知症治療薬「レカネマブ」登場!

2022年09月29日 | エイジングライフ研究所から
9月29日のニュースで「まあ、認知症の薬ができたんですって」とうれしくなった人は多いと思います。
私たちエイジングライフ研究所の考えを、お話しておきましょう。
結論は、本当に残念ですが「近いうちに行き詰る」といわざるを得ません。
2021年に鳴り物入りで登場した「アデュカヌマブ」。この顛末を覚えている人はどのくらいいるでしょうか。
顛末は、この記事に書いてあります。そして認知症治療薬の話題が出るたびの私見の記事へのリンクも張っていますから、関心がある方はお読みください。
エーザイの株価12,765円(2021.5)→5,266円(2022.5)(2022.5)
カエル体験館カワヅ―(続)マダラヤドクガエル

この記事をあげるにあたり、正確を期するために少し調べました。アデュカヌマブの件については国立長寿医療研究センター研究紹介コラム「認知症の新しい治療薬アデュカヌマブについて」が一番丁寧で、一般の人にもわかりやすく解説されていると思いました。
「アルツハイマー型認知症の原因がアミロイドβが溜まってできるアミロイド斑(老人斑)なら、アミロイドβにくっついて機能できなくさせる抗体を体内に入れることで、老人斑を減らすことができたら認知機能低下を抑える効果があるはず」という前提のもとに15年間追跡調査した結果、「アデュカヌマブを投与し続けた人を死後解剖した結果「抗体ははっきり上昇し、老人班は少なかった。しかし認知機能の改善はない」という結論に達したのです。
ココエキヤガエル

単純な私などは、アミロイドβと認知症の発症には関係がないと思ってしまいますし、アミロイド仮説は破綻したという意見も確かにありますが、研究者の立場によって、考えは違います。
発症後に薬で老人斑を減らしても認知機能低下を止められないなら、たまる前に薬を作用させれば効果があるかもしれない…
皆さんも読まれたかもしれませんが、これが「アルツハイマー型認知症にかかわりの深いアミロイドβは、発病の20~30年も前から蓄積が始まっている。予防はその早いタイミングから投与をすること」という意見につながりました。
どうやって見つける?(症状は全く出ていないわけですから、その方策として血液中のアミロイドβに測定するというアプローチもあります)
何十年も予防薬を飲み続けるのか?当然薬価は高いのに。
素朴な疑問を抱いてしまいます。
アイゾメヤドクガエル

さて、今回のレカネマブはどこがどう違うのでしょうか?
私は薬学が専門ではありませんから、情報はネットから取り入れたものが中心だということをお断りしておきます。
アミロイドβは一種のたんぱく質。そのアミロイドβが結合した老人斑にとりついて除去する働きを持つ薬(抗体医薬)がアデュカヌマブでありレカネマブです。
レカネマブは、アデュカヌマブよりも結合状態が前の段階のアミロイドβに作用させるところがちょっと違うということらしいです。
前回問題になった治験がうまくいき、「症状悪化を抑える有効性が確認できた(言い換えると、アミロイドβを取り除いて神経細胞が壊れるのを防ぐ効果がある)」という発表だったのです。
セマダラヤドクガエル

2週間に一度の注射を1年半続け(治験段階では服薬するだけではないのですね。このまま注射ということになると病院サイドの負担も増えます)27%の進行抑制効果があったといわれています。
具体的な評価点としてはプラセボ群1.67点の低下であったのに対し、レカネマブ投与群1.22点の低下とありました。
海外ではADASという検査をよく使いますが、これは高齢になると1年で9-11点低下するとも言われていますから、ADASではないでしょう。
いろいろ調べましたが、どんな神経心理機能検査を使っているのかはわかりませんでした。
総得点がわかりませんが、たった0.45点しか低下しないということが、日常生活にはどのように反映されるのか、私には想像できません…
例えば、エイジングライフ研究所が用いるMMSEは30点満点のテストですが、+3点以上なら改善、-3点以下なら悪化と評価します。生活上起きてくるはっきりとした変化を、家族や本人が見つけることができるからです。
(CDRの評価でした。これは当人の認知機能を測定するものではなく周囲の人が観察して記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味・関心、介護状況の6分野で、5段階で重症度を決めるものです。正常の0点から6分野すべてで最重度の30点の評価になりますが、あくまでも観察されたものです)
アフリカツメガエル

今日の発表を冷静に評価していると思われた記事を紹介しておきましょう。
1.機能低下の抑制ができることは良い。
2.回復させる薬ではない。
3.無症状の早期患者をどう判定するか。
4.薬価が高いため起きてくる高額医療費の問題。

それ以前に言いたいことがあります。
アミロイドβと認知症には関係がないとしたら…研究者の努力も開発費用も本当にもったいなく悲しいことですね。
ウーパールーパー。



認知症に関して理論的に詳しく知りたい方は、以下のブログもお読みください。



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