脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

前頭葉機能がその人らしく働かないと…

2021年10月30日 | 正常から認知症への移り変わり
前頭葉機能については繰り返し書いています。そしてここで書くことは研究レベルの話ではなくて、日常生活で「脳機能」というものを理解してもらう一助にしてほしいということが目的です。脳は複雑に動いていますから、単純化して話しているのです。

保健師さんから相談メールが来ました。
「近所に越してきた方の名字がどうしても覚えられない。どんなに繰り返してもどうしても覚えられない。ショックだ」というのが主訴の方がいたそうです。
「記憶が障害されている!」多くの人にとっては記憶と物忘れはごっちゃまぜになってますから「物忘れ!すわ認知症!」という流れになると思います。
「記憶」には「覚える」「覚えておく」「思い出す」という三つの過程があるのです。覚えられないのか、覚えていられないのか、思い出すことができないのか。少し詳しく考えることも必要です
ちょっと勉強していれば、新しいことをどうしても覚えることができない「側頭葉性健忘症」とか言葉に障害がおきる「失語症」などにまで思いを巡らせることができるでしょう。

このようなときに、二段階方式ではいつものルーティーンに沿ってその人を理解しようとしていきます。
ルーティンとして、先ずは脳の機能検査をします。それからその人の日常生活の状態を調べます。そしてここ数年間、どのように生活してきたか、生活ぶりに変化を生むような大きな出来事がなかったかのかということを聞き取ります。
その流れで進めたようですが、あまりに訴えが現実的で切迫感も伝わってきて「何か別のこと」を考えなくてもいいのかと思っての質問だったようです。

結論を言いましょう。
その方の脳機能は、前頭葉機能のうちの注意を集中させたり分配させたりする機能だけが極端に低下してしまっていました。かなひろいテストが二分間で正答数はたった3個という状態で、全然できていませんでした。内容はあいまいな状態で、まさに「状況を判断しながら、たまに注意力を分配しながら、その課題について意識を集中させて取り組む」ことが不得手になっているという結果です。
そして、そのような前頭葉機能の能力低下を自覚してもいるのです。

てきぱきと物事をこなせない。
感動がなくなった。
動作が緩慢になった。
抑制が効かない。
根気が続かない。
意欲がなくなった。
つまり以前の自分ではないようだ自覚しているのです。前頭葉の機能低下を自覚している。これが認知症の始まりです。
決して物忘れではなく、以前の自分のように物事に対処できない(ということを自覚している)。ここが認知症への入り口であることを、保健師さんたちはもっと信じてほしいと思います。

名前の覚え方は、もう一工夫。書いてみる。それを声に出していってみる。今までに知った人と同じ名前ではないか?タレントに同じ名前の人はいないか?何か関連付けられるものはないか。その名前にまつわるエピソードを作り上げてみる。
短い時間で繰り返す。どうしても思いだけないと、最初の音だけ言ってもらう。
工夫はいろいろできますね。これも前頭葉の機能です。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。