受験校から意に反して予備校に。
別ルートで登っても目指す頂上は前回と同一だ。
代わり映えしないことには興味がわかない性質だ。
あれほど勉強好きだったのにどうも気が乗らない。
精勤に授業には出たが、ただ聴くだけで積極的に取り組むことはなかった。
興味関心を変えることでどうにか学生としての面目を保った。
まずは英語。
コナン・ドイル作の推理小説シャーロック・ホームズシリーズを1冊ずつ買って来ては短編なので毎回一気に読んだ。
不明の単語があっても辞書を引かずに読み通した。
読み切ると達成感が残るので続けることができた。
結果的に長文の読解力と自信がついた。
いまでもストーリを憶えているのは「まだらの紐」だ。
つぎに世界史。
予備校といっても京都に3校、多くても4校あるだけで、すべてローカル校。
今のように有力校が有名教員を擁してレベルの高い競争を全国で繰り広げるといった状況ではなかった。
世界史の新堀?先生の中国史は圧巻だった。
中国史は土地の集中とそれに起因する流民化、北方遊牧民の興隆と侵攻を軸に国が乱れ王朝が交代することを押さえたらモノにできると教えられた。
先生はマルクスの歴史哲学、唯物史観に沿って授業をされたので眼から鱗、知的好奇心を大いにそそられた。
歴史は階級の利害関係によって動き、動きの方向と大きさは力関係によって決まるとマルクスの哲学から学んだ。
世界史の解釈が面白くなった。
自分の中でこれまでと違った思想が芽生えはじめた。
あとの授業は成績が落ちない程度に流すだけだった。
休み時間の雑談が楽しく遊び友達が何人もできた。