講堂で中三の女子学生が滝廉太郎の歌曲「花」を合唱していた。
♪春のうらゝの隅田川
のぼりくだりの船人が
櫂のしづくも花と散る
ながめを何にたとうべき
長堤を埋め尽くす桜花の光景を想像するだけで心が浮き浮きするが
このときは合唱する女の子たちに心がときめいた。
はじめて女に色気を感じた瞬間だった。
はじけるような活力に満ちた歌声、生き生きと輝く目、彼女たちは
大人たちに観られない自信にあふれていた。
桜満開の発心公園で先祖祭りがあった。
遠方から樋口姓の大人たちが集って酒宴に興じた。
敗戦による失意で大人たちはどこか自嘲的で卑屈めいていた。
♪お酒呑むな 酒呑むなの 御意見なれど ヨイヨイ
酒呑みや 酒呑まずに 居られるものですか
祭りの閉めは先祖の墓参りだった。
我が家の近くの樋口さんの庭に苔むした大きな岩の墓碑が立っていた。
聞くところによると先祖は草野氏の刀鍛治だったそうだ。
草野氏は豊臣秀吉の「九州征伐」に抗して島津側について滅亡した。
当主家清は降伏したが服従を疑われて肥後南関で誘殺された。
それを知った一族は耳納連山尾根の発心城の地蔵鼻で自害した。
城の焼け跡を掘ると炭化した米が出ると聞いた。
ブラジル人監督が日本の俳優を使って勝ち組による最初のテロの映画を撮った。
銃弾に斃れたのはバストス産業組合専務溝部幾太だった。
題名 けがれた心
監督 V.アモリン
出演 伊原剛志 常盤貴子 余貴美子 奥田暎二 E.モスコヴィス
昨日梅田まで観に行った。
わが父母も台風にたとえるなら渦中の周辺部に居た事件なので映像化されると
リアリティを全身で感じ涙が止まらなかった。
1946年のテロ事件だが、取材を受けた多くの日系人が語ったように「映画化は
ガイジンにしかできない」ほどに、事件の根は深い。
その根は今日の日本人にとっても同根である。
われわれは、天皇崇拝と日の丸崇拝を何らかの感情抜きに平気で語れるか?
そのアンチテーゼである君が代反対、日の丸反対を自由に言論できるか?
信念の違いはいかんともしがたい。
一方の信念を強制する政治はあらたな悲劇を生む、と映画を観終わって思った。
追記。
2013/5/21~ 朝日新聞大阪版夕刊「祖国をたどって」より
平山記者が脇山甚作元陸軍大佐を射殺した日高徳一実行犯(87)を訪ねる。
仲間3人と日系指導者の筆頭脇山氏の自宅を訪ねた。
幼い孫(13歳と9歳)が玄関を開け客間に通される。
対座し自決勧告書と短刀を差し出し自決を迫り拒否される。
台所からにコーヒーを用意するカチャカチャという音がきこえた。
最近奥原監督により彼に対するインタヴューと事件の背景が映像化されYOU
チューブで公開された。
http://www.youtube. com/watch?v=QDf_egB3MG4