自分史 物怖じしない国際人を育てるヒント集

近現代史に触れつつ自分の生涯を追体験的に語ることによって環境、体験、教育がいかに一個人の自己形成に影響したか跡付ける。

高校入学事始

2013-12-14 | 体験>知識

入学式の日だとすればできすぎているが記憶ではその日になっている。
外の水道のところで校長先生に声をかけられた。
樋口君だね」
意味不明だが印象に残った。
板垣政参校長、この名前を記憶しておいてほしい。
帰りは同じ久大線を利用することになるA君と道連れになった。
御井駅までたっぷり20分はかかる。
彼は言った。「東大に行く」
自分とあまりにも思考法が違うことに驚いた。
わたしは九大を目指しているが先々ではなく「今」しか考えていなかった。
だいたい学年で3位以上の甲乙つけがたい成績の生徒が集まったと考えよう。
スタート時点の診断テストでは成績分布がなだらかな山型に収まるとしても学期末試験では成績のピラミッドができるだろう。
一般に学業でもスポーツでもテストの成績はピラミッドの図形を作る。
成り行きや運に任せていたらピラミッドの底石になるかもしれない。
夢も希望も打ち砕かれて這い上がる気力もなくなるだろう。
マラソンではないがスタート直後に先頭集団につけよう。
これがわたしの覚悟であり哲学だった。
クラスに分かれて担任の訓示を聞いた。
寝食を惜しんで勉強せよ。
ただし7時間半は睡眠を確保せよ。
馬鹿正直に言うことを聞くわたしは3年間それを守り続けた。
11時半に寝て7時に起きて支度をして、列車が駅に近づく頃家から走り出して動き出す列車に飛び乗る生活を続けた。
当時の列車はドアが内開きで満員でラッシュ時はドアを開けたまま走っていた。
計画通り先頭集団の位置を維持できた。
熾烈な競争だった。
一学期末に急性盲腸炎で「救急車」で久大病院に運ばれた学友がいたほどだ。


 


最初にして最後のデイト/桜の季節/とわの別れ

2013-12-01 | 体験>知識

漱石も訪れた桜の名所発心公園は吉野桜が満開だった。
示し合わせて人出のないウイークデイに隠れるようにして花深き桜の樹の下で語り合った。
どんな話をしたのか何も憶えていない。
浮き浮きした気分でなかったことは確かだ。
けじめをつけるデイトであることは分かり合っていた。
写真を撮り合った。
二人して裏通りを駆けるようにして山を下りて分かれた。
近くに住んでいても出会うことがないだろうことは二人とも分かっていた。
久大線は単線で草野駅で列車がすれ違うことはなかった。
だから目を合わせるだけの淡い恋が終わることも分かっていた。
日を置かずして手紙で縁切りを確認した。
予感が的中してその日かぎりで彼女と出会うことはなかった。
月日が経って風の便りに彼女が学友の一人と結婚したことを知った。
わたしの幸福なこども時代の掉尾に一輪の花をそえてくれたひとの幸せを祈りたい。

※特定秘密保護法の廃止をめざして管理者の「恣意」で秘密を決めて黒塗りにしました。
特定秘密を探ったり見たり聞いたり言ったりすることは10年以下の懲役に値します。
教唆共謀も同罪です。