英語の先生Yは軍隊上がりで剣道がめっぽう強かった。
英語の教え方は、そのご永く日本人を英語音痴にした伝統的な日本流で、普通だった。
会話も作文もヒアリングもなかったから試験ではいつもほぼ満点だった。
あるとき返された答案を見て驚いた。
間違った箇所が消されて加筆されていたのだ。
多分先生は10回連続満点の子がいると職員室で自慢したかったのだろう。
年上だという引け目もあって、ひいきされるのをいさぎよしとしなかった。
女の子の好意も苦手だった。
中学では生徒数が増えたので魅力的な女の子の数が増えた。
女の子は色気づくのが早いので男どもも魅かれて騒がしくなった。
ラヴレターについてもあることないことが噂になった。
あるとき同級のMが、Sさんが君に好意を寄せている、と水を向けて来た。
晩生のわたしは真に受けてすぐさまSさんに本当か確かめに行った。
確かめてどうするのか、も考えないで。
「そんなこと言うわけないでしょう! 常識ないわね」とぴしゃり。
またしてもやらかしてしまった。
Mが彼女に好意をいだいていて私を担いだのだった。