風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

病室に君取り残す冬隣 【季語:冬隣】

2019年11月02日 | 俳句:秋 時候

身重の妻が入院した際のこと

先生から色々な説明を受け
必要な書類にサインをして
部屋に入りました

施設も充実しているので
何かあっても大丈夫と
そこは一安心だったのですが

肌寒い季節
独り病室に残すのは可愛そうだなと
後ろ髪を引かれる思いがしました


先行きが分からなくなり秋に入る 【季語:秋】

2019年09月21日 | 俳句:秋 時候
今のままで暮らしていけるのだろうかと
ふとそんな漠然とした不安に
かられることがあります

生活のスタイルもそうですが
自分の知力や体力
そんなものもどこまで
維持できるのだろうと
いささか自信がなくなってきます

ここのところ忙しさにかまけて
本を読む機会もめっきりと少なくなり
自分の中がすかすかのように感じています

ただでさえ何も無い自分の心が
このまま益々貧弱になって行くとしたら
ちょっと想像したくないなと思ってしまいます

そんな自分に秋めいた風は
今まで以上に染み渡ります

焦げ跡が妙に寒いな冬隣 【季語:冬隣】

2018年11月03日 | 俳句:秋 時候
スーツには小さな煙草の焦げ跡がついていました
煙草を吸う友人と歩いている時に
誤ってつけてしまったものです

小さな穴ですし
スーツの色も茶色でしたので
あまり目立たないからと
気にしていなかったのですが

とある小雨の降る日
そのスーツを着て歩いていると
どうも一部寒く感じられるところがあり
見るとそれが煙草の焦げ跡がついたところでした

僕が忘れかけていた小さな穴さえ
冷気は見逃さず
その身を捻じ込んで来ました

岩叩く波ひっそりと秋夕べ 【季語:秋夕べ】

2018年10月13日 | 俳句:秋 時候
塩釜から松島に遊覧船で渡りました

船上からは
たくさんの島が見えたのですが

島々は長い間に
波が削られてそれぞれに
特徴のある形をしていました

時は夕暮れ
船の側面に当たる漣の上を
夕日が照らしています

その夕日の色合いに
諌められたように

島を叩く波もひっそりとして
島がこれ以上形を変えないように
心を砕いているようにも見えました

片付けのやる気どこかに残暑かな 【季語:残暑】

2018年09月08日 | 俳句:秋 時候

引越しの荷物が届き
週末は片づけに
専念しようと思ったのですが

昼間の陽射しが強く
部屋で作業をしていると
大粒の汗が止まりません

やる気もすっかりと失せて
勢い作業をする手も止まり
クーラーをつけて涼んでしまいました

夜になってやればいいやと
高をくくっていたのですが
夜もさほど涼しくならず
結局、作業はほとんど進みませんでした


松島や秋の鴎の慌てよう 【季語:秋】

2017年10月21日 | 俳句:秋 時候
松島に渡る遊覧船の上を
一羽の鴎が飛び過ぎて行きました

仲間とはぐれたのでしょうか
左右をキョロキョロと眺めながら
少し慌てている様子です

こんなに美しい風景に
何をそんなにと思ったのですが

よく考えれば普段から
何かに追い立てられるように
慌てている自分も同じようなもの

当てもなく飛んでいく鴎が
急に哀れに思えてきて
その飛び去る姿を
いつまでも眺めていました

首筋もそろそろひやり九月尽 【季語:九月尽】

2016年09月24日 | 俳句:秋 時候
10月に向うに連れて
風も冷たくなってきました
9月中はクールビズということで
ネクタイをしていなかったのですが

先週あたりは首筋が
どこか涼しく感じられて
襟元のボタンを閉じたりしていました

僕と同じように感じる人もいたようです
電車に乗っていたら
手にマフラーを持っている人もいて
これからますます寒くなるだろうなということが
実感できました

帰国する小麦の肌にそぞろ寒 【季語:そぞろ寒】

2016年09月10日 | 俳句:秋 時候
一週間程度
日本を離れただけで
こんなにも季節は
表情を変えるのかと
暖かなところから
戻って来たせいでしょうか
余計にそんなことを感じていました

スペインで
季節はずれに日焼した
肌にはまだ
その国の色香が漂い
火照っていたのですが

日本に戻って来たことを
実感させるかのように
秋の風が肌に冷たく触れて行きました

影ふみの影しおらしく秋の午後 【季語:秋】

2015年11月01日 | 俳句:秋 時候
心地よく晴れた秋の午後でした
その穏やかさを楽しみながら
ゆっくりと道を歩いていた僕を
小学生ぐらいの男の子が二人
追い越していきました
二人はお互いの影を踏みあうように
追いかけたり逃げたりを
繰り返していました

きっと影ふみをしていたのでしょう
楽しそうに息を切らしていたのですが
その足元から伸びる影を見ていたら
色なき秋の風に
どこか透き通っているようで

二人もそんな色合いに
興味を覚えたのかななどと
思っていました

影だけが連れ添うものよ秋の暮【秋の暮】

2015年10月18日 | 俳句:秋 時候

肌寒い夕暮れ
背中を丸め街を歩いていました

空を色づける夕日も
重たげな色合いで
気持ちも沈みがち

そんな寒空の下でも
誰かと一緒に歩くのであれば
それなりに楽しくいられるのでしょうが

連れ添うものは
足元から伸びる長い影だけ

肌寒さが一層
胸に染みました

 

(Haiku)
Lost in the distance,
Dusk falls, shadows gather 'round,
Autumn’s loneliness.