風のささやき 俳句のblog

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ナイフ 【詩】

2024年03月21日 | 

「ナイフ」

読みかけの本を、あなたは枕元に置いた
手元だけが明るい小さな蛍光灯が
あなたの顔を照らしていた

間近で僕は、その横顔を見ていた
上を向いて、あなたは何を考えていたのだろう
少し眠くなって、睡魔の腕で布団に
引き込まれていたのかも知れない

あなたの心に浮かぶもの、その心の映える仕草
表情も、言葉も、愛しく思えている

あなたが、眠ってしまった後の部屋は
冬の夜の静けさに満ちていた
その静けさが僕の中に入り込んで
僕の心を冷たく軋ませる

あなたの枕元、開かれ置かれた
本を僕は閉じる
栞代わりの落葉を挟んで
蛍光灯を消した、一瞬で闇に満たされる部屋に
僕はまた、闇の断片であることを思い出し
闇に取り込まれている

喉元にまた、鋭利なナイフの
冷たい刃先の殺気を感じ、身震いをする
ひと押しすれば、いつでも亡き者になる
もしかするとそれは、自分の意志でも

いつでも足元は、闇に脅かされていることを、
僕の指定席などどこにもなくて
繋ぎとめてくれる人たちの絆に
結ばれているだけだ
時として、それはからまり、重たい鎖のように
断ち切ってしまいたくも、なるけれど

体も冷えてきた
あなたの横に
あなたの寝息を感じられる距離に
そっと自分を動かして

おやすみ
あなたは読書の好きな人だ
沢山の人の思いを心に読み取って
ますます、心を柔らかにして

おやすみ
僕はいつまでも頼りにならずに
あなたを縁に眠る



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