「街で」
# 1
歩き疲れて
あなたと二人
こうして座って
目を合わせ微笑む。
ささいな仕草からも
読みとれる
僕らの間には黙っていても
通じあえる言葉があって
それがこうまでに
二人を一緒にする。
僕らのテーブルにも
白い珈琲カップが二つ運ばれて
手で触れるとあなたといる時の
温かさと同じだ。
# 2
耳に届くのは
壊れて話をやめなくなった
ラジオから流れるような言葉
少し暴力的で疲れてしまう。
僕はあなたと
そんな言葉で
結ばれたものには
なりたくはないんだ。
黙っていても心は華やいでくる
春風に心地良く揺られる
タンポポを真似て
その気分に揺られていたいんだ。
# 3
たとえばあなたと
目を合わせ微笑む。
あどけない少女の
人懐っこさ残す笑顔
優しい瞳に映し出される
あなたの心のさざ波が
僕の心にも押し寄せて
そんなとき僕には
あなたがよく分かるのだ。
そうして寂しげな仕草には
誘われるように背を押す
そんな二人だけの言葉を
大切に思うのだ
# 4
口に出した傍から
本当のことが伝えられなくて
嘘を重ねる言葉は
もうこれ以上
紡ぐのを止めにしたくて。
どんな人込みにでも伝えあえる
二人だけの言葉に
僕の心の調べを
あなたが感じとってくれるといい。
もしかすると僕自身でさえ
気が付いていないかも知れない
心の調べを。
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