GOIN' UP / FREDDIE HUBBARD (BLUE NOTE BST 84056)
FREDDIE HUBBARD (tp) HANK MOBLEY (ts) McCOY TYNER (p)
PAUL CHANBERS (b) PHILLY JOE JONES (ds)
1960.11.6
三条大橋が好きだった。
必ずこの橋を渡るように、下宿先を洛北からわざわざ山科のアパートに移り変えたけれど、大学には週一ほどしか出ず、その辺りをぶらぶらと。
先の事など何も考えない毎日が、自分の22才だった。
先日、とあるカフェでC・G(カー・グラフィック)を読んでいると、BGMで「おやっ」を思う良いジャズを流していて、そのうち、ピアノのイントロの後、tpが・・・・・・・
オォ、‘I WISHED I KNEW’ではないか!やるぜ!
コルトレーン、エバンスなどの演奏で知られるスタンダード‘I WISH I KNEW’とは全く別の曲で、ハバードの友人でts奏者、Billy Smithが作曲したもの。
帰宅して久し振りに‘GOIN' UP’を取り出した。このアルバムはハバードのBNデヴュー作に続く2作目で、「オープン・セサミ」の陰に隠れていますが、内容は勝るとも劣らず、こちらの方が好き、と言う方も少なくない。
ガイド・ブック等に頼り過ぎている耳にはなかなか辿り着かない一枚。
B面の2曲目に針を落とす前に、カートリッジを敢えてナローなシュアM44Gに変えた。これが大正解。マッコイの後のハバードの艶と張りのある「音色」に耳を奪われた。
思わず「確か、再発のリバティ盤のはずだが・・・・・」とラベルを確認するほど(オリジナル盤をずっと待っていますがなかなか縁遠いです)。
メロディをシンプルに吹くだけでこれほどの情感を出すとは・・・・・・・・
エンディングに掛けてのバラード・プレイは、最早「新人」の域を超越しており、オープンtpの醍醐味とはこのことだろう。
モブレィも自身屈指のバラード・プレイを展開し、セッションを通じて先輩の意地を聴かせてくれる。
これもライオンの狙いの一つ。
1週間後の‘ROLL CALL’ではpにケリー、dsにブレイキーを配し、ライオンはモブレィのプライドに応えている。
プレイ・バックを聴きながら、ライオンはウルフとR・マイルズにこう囁いた。
「場所はマンハッタンの高層ビル、タイトルはもう決まっているさ、UPを出来るだけ上積みして」
わずか数年前、インディアナポリスのチンピラ小僧だったハバードの22才は、正にGOIN' UP³だった。
ps
しばらく開店休業状態が続いていた拙HP 「BLUE SPIRITS」を更新しましたので、暇つぶしにどうぞ。