この2枚の音源は、既にVERVEへ移籍していたエヴァンスがRIVERSIDEとの契約履行に基づき、1963年1月10日、ソロで録音したもの。
しかし、リアルタイムではリリースされず、エヴァンスの死後、1985年、「The Complete Riverside Recordings」というBOX Setの中で初めて日の目を見、4年後の89年に、まず「Vol.1」が、そして92年に「Vol.2」が単体でリリースされた。
「Vol.1」はレコード(上の画像)とCDでリリースされましたが、「Vol.2」はCDのみ。
人気者、エヴァンスの初めてのフルサイズ・ソロ作品にしては、異例なほど不憫な扱いをされ、その理由が、契約の消化演奏のようなもので、リハーサルもどきの演奏が混在する、と言われる。
確かにそうした箇所が散見され、当時、キープニュースとエヴァンス自身も表に出すまでもない、と判断したそうです。
でも、先入観を棄て、50年以上前の1月10日の夜、スタジオで一人静かにピアノに向かうエヴァンスの姿を思い浮かべながら、このソロ演奏を聴くと、単に「完成度」という尺度では測ることが出来ないエヴァンスの「音楽性」が見えてくる。
例えば、Vol.1の2曲目のメロディ、'My Favorite Things~Easy To Love’に掛けてややラフな局面が有り、ここを「思いつき」と捉えるか、イマジネーション、インスピレーションを働かせながら「出口」と「入口」を模索している、と捉えるか、大きな違いが出てきます。
また、Vol.2の1曲目、‘All The Things You Are’の後半、押し寄せる荒波のような激しいプレイは、一般的なイメージと異なり、本来の「武闘派」の顔を見せつける。
いじれにしても、この2枚は、カヴァは実に素っ気ないけれど、エヴァンスの「素顔」を聴かせる作品として、大好きで、聴く頻度も高いです。