現役時代、所用で大阪へ行った際、時間が有れば天王寺の交差点の角のビルの地下にある「トップ・シンバル」に寄っていた。ここは筋金入りのジャズ喫茶、ハード・バップ生一本と言う雰囲気が充満していて好きな穴倉だった。初めて寄った時、レコード・リストを見せて貰うと、このアルバムがあった。本作を置いてあるジャズ喫茶は意外の少なく、まさか、とちょっと驚き、リクエストすると、マスターも「これ、お持ちなんですか」と少々、驚いた様子だった。
C・サリバンと言っても、今となっては首をひねる人の方が多いかもしれないが、一度聴けば決して忘れられない程、素晴らしい出来映えです。
一曲目のサリヴァンのオリジナル”Re-Entry”、アップテンポでドライブ感溢れる演奏は、圧巻。ギュッと聴き手の神経を捉えて離さない。ペットが冴えに冴え渡るし、バロンのpの凄みは今では信じられないほどです。
巷で代表作と言われる”The Moment”の演奏がまるで余興のように聴こえる。いくら褒めても、バロンからは素っ気ない言葉しか返って来ないそうで、それも当然。バロン自身が一番良く知っているからだろう。
一転して2曲目のバラード「ボディ&ソウル」。うぅーん、これも痺れますよ。力量を問われるバラード演奏だが、実に堂々としたプレイに言葉を失う。知られざる名演とは正にこのことですね。
A面はtpカルテットですが、B面はルネ・マクリーン(as)が入ったクィンテットで全て、サリヴァンのオリジナルが続き、これがクールで小粋な演奏が収められている。土台となるバロン(p)、B・ウィリアムス(b)、B・ハート(ds)のリズム・セクションも出色の働きを聴かせる。
このアルバムのWHY NOTレーベルは、自分の記憶に間違いがなければ、1969年頃、SJ誌が主催した懸賞論文で主席の賞に輝き、その後、ジャズ評論家の道に進んだ悠雅彦氏が、1975年、トリオ・レコードと立ち上げた我が国のジャズ・レーベルで、その内の一枚です。録音は1976年8月17日、NYで行われている。気合はハンパじゃない。
なお、風の便りでは「トップ・シンバル」は10年ほど前?に店を閉められたそうです。記憶に強く残るジャズ喫茶でした。
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