4枚のSPECIAL EDITIONは、フロントをロフト・ジャズの中心人物で固めているので、ロフト・ジャズのメイン・レーベル「インディア・ナビゲーション」のECM版と映っても不思議ではない。ディジョネット自身も「インディア・ナビゲーション」の作品に参加している間柄。
問題は、リーダーとしてディジョネットがその猛者達をどう料理するかに掛かっている。しかし、SPECIAL EDITIONはドラマーだけではないディジョネットの多彩な才能(アレンジャー、コンポーザー、キーボード、ボーカリスト、・・・等々)を浮き彫りにすることに力点が置かれ、良い意味でも悪い意味でも暴れ馬的なインディア・ナビゲーションのイメージが薄まり、ECMらしいきっちりとコントロールされた作品に仕上がっている。
D・マレイ、A・ブライスという筋金が入った1作目(↑)‘SPECIAL EDITION’(1979年録音)は翌1980年、DB誌で最優秀作品、またフランスではアカデミー賞に選ばれた作品。我が国のSJ誌ではどうだったか失念しました。
重量級の二人に対し、ディジョネットも果敢に打ち込んでいきスリリングです。 ただ、A-2での執拗なリフ・フレーズやディジョネットがメロディカを吹くコルトレーンの‘Central Park West’はテーマ演奏だけで終わり、意図するものが必ずしもプラスになっているとは思えない。
4作中、一番好きなアルバムが2作目の‘Tin Can Alley’、フロントがC・フリーマン、J・パーセルに替わる。
チコのtsが抜群に良い。負けずにパーセルも頑張っている。ディジョネットは前作に比べやや控えめ。A-2、イントロ部分では些か少女趣味的なpを披露している。また、B-2では4つ楽器の多重録音までも。
前作と同じフロントの二人にゲストとしてBaikida Carroll(tp)を加えた‘Inflation Blues’。音域がぐっと広がりグループ・エクスプレッションは豊かになり、面白みも増しているものの Carrollのマイルス・コピーに閉口する。‘Ebony’は軽いフュージョン・タッチが心地良い。タイトル曲は意表を突いたレゲエでボーカルまで聴かせる。
tsを再度、D・マレイに替え、H・ジョンソンを新たに加えた最終章。ラスト・アルバムが既定路線だったのでしょう、カヴァはゲート・フォールド、表・裏に家族写真、中にディジョネットのヒストリー写真、まるで一昔前の映画の「ハッピー・エンド」そのもの。演奏もどこかしこデキシー・スタイル風のアレンジも出て、この一枚だけ、前3作とやや趣を異にしている。
この4枚を総括すると、ディジョネットの隠れた才能を掘り起こそうとする試み、定型に囚われないチャレンジ精神や多芸ぶり、遊び心が盛り沢山詰め込まれている。そして評価も高い。
しかし、凡な自分の耳には半分も理解できていない。恐らく期待する視点が違うのだろう。
ディジョネットの一ファンとしては、一枚でいいからdsだけに絞り、つわもの達を率いて一気になだれ込む様な場外ホームランを打って欲しかった。
なお、4作ともエンジニアは異なるけれど、「音」はすこぶる良く、魅力です。
何が言いたいのか、何がやりたいのか、全然わかりませんでした。
こういうのを聴くたびに、私にはやっぱりECMへの適性がないのかなあと
心配になってしまいます。
合う、合わないと言うか、レーベルが聴く人を選ぶ傾向を感じます。
時代は異なりますが、同じドイツ人でもライオンとは全く違いますね。