一説によると、ゲルダーはBNの録音をHI‐FIではなく、ごく一般的な再生装置でもジャズのスピリットを十分に感じられるような音造りを優先したとされる。裏を返せば、ハイ・ゲレードなオーディオ・システムより、むしろスタンダード・クラスの方がゲルダー・サウンドを堪能できると、言えなくもない。
ゲルダーはそのノウハウを非公開、つまり秘密にしていたので真偽のほどは定かでなく、全てが均一なレベルでもない。しかも時代により変化している。
A・ウィリアムス、18歳時の初リーダー作、‘LIFE TIME’(4180)。
その昔、プアな装置で初めてゲルダー・サウンドの凄みを感じた一枚。
パーソネルは、
Sam Rivers - tenor sax (Tr.1-3)、Herbie Hancock - piano (Tr.4-5)、Bobby Hutcherson -vibraphone, marimba (Tr.4)、Richard Davis - bass (Tr.1-2)、Gary Peacock - bass (Tr.1-3)
Ron Carter - bass (Tr.5)、Anthony Williams(Tony Williams) - drums, percussion (Tr.5 omit)
録音は1964年8月21&24日
クレジットされた全員が揃ったトラックは一曲もなく、小ブループに分かれ、ラスト曲はリーダーが外れハンコックとカーターのデュオで終わる変則な作品。実験臭さが無いワケではありませんが、それを上回るアカデミックでポエム的な雰囲気さえ漂わす快作。
主役は勿論、ウィリアムスですが、もう一人の主役がゲルダー。作品コンセプトを完全に把握したかのようなリアリティ重視の音造りは、もはや単なる録音エンジニアの域を超えていて、ライオンが全幅の信頼を置くワケですね。
カッティング・レベルが高く、普段、8:50位のボリュームが8:10で充分、更に上げても妙に強張された部分やノイジーさもなくナチュラルに伸びていく。
「お前如きのシステムで解ったような事を!」と笑われそうですが、ゲルダー・サウンドの真髄を体感できる一枚には違いありません。
私も、今の安物セットで聴く感想より、若い頃のもっと安モンのオーディオセットで聴いた時の感動の方がはるかに大きいです。
ヴァン・ゲルダーは「庶民の味方」ですね。
でも、本当は聴く側の感性の若さのほうが重要なんだろうと思います。
若い時こそ、聴くべき遺産ですね。
ほぼリアルタイムで聴いたあの頃の思い出、感動が遺産となってブロク・ネタになるとは・・・・・・・・
いい時代を過ごせたなぁ、と思います。