西海岸での数年間の生活を終え、心機一転、再び東海岸にその活躍の場を求めたショーは、73年にジョー・フィールズによって設立された新興レーベル「ミューズ」から新録を発表した。
コンテポラリーの先2作は、例えるならば、何処かしこ研究論文の発表のような堅苦しさが見え隠れしたけれど、JM、ハッチャーソンのコンボ(LIVE AT MONTREUXでの白熱のプレイが聴きもの)での経験を経て、また、プロデューサー、カスクーナのアドバイスも大きいと思うが、レコードと言う商業メデイアの側面を理解し、ハード・バップを基調に、コンガ、パーカッションを加え、色彩感と時代性を織り交ぜながら、己の存在を主張している。
本作の聴き所は、ショーのtpの吹き方の変化で、力み、突っ張りが影を潜め、スムーズで柔らかなソロ・ワークが前面に出始め、表現力の巾が増している。その好例がショーのオリジナル、妻に捧げた‘Katrina Ballerrina’、しなやかなtpプレイに愛の深さ(当時の)が覗く。
18才の時に作曲したというコルトレーンに捧げたタイトル曲”Moontrane”と天を仰ぐショーのポーズが妙に重なるこの作品、やや新鮮さに欠けるが、仕切り直しという意味ではショーにとって意義のあったアルバムではないでしょうか。このポーズ、後年、リリースされたコルトレーンの‘STELLER REGIONS’とそっくりです。
本作は当時、ジャズ喫茶でもよくかかり、ショーの認知度も上がるきっかけとなり、その頃、ショーは既に30才になっていたが、「遅すぎる春」がやっと視界に入ってきた。
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