地図で直線の国境を見ると、住む人の意思とは無関係に、よそからやってきた人が無理やり引いた線だろうと想像が湧いてきます。
住む人がいなかったところなのかもしれません。
ところが、住む人の意思と無関係どころか、意思のふるい分けをしてつくられた目に見えない国境もあります。
人びとの意思を、磁石が鉄粉を集めるように極に偏らせてつくられたものです。
見えない国境の一方の人たちは、国をだいじにしないどころか、住む国を忘れさせよう、もっとひどくなると国を壊してしまおうといつも考えています。
見えない国境は、人間が意識によって確認できる空間にはありません。
電車で隣に座った人との間にもあるかもしれないのです。
困ったことに、いま学校という場では見えない国境の種苗が育てられ、社会のあらゆる場にそれが散らばり、マス・メディアという強力な機関が増殖作業を引き受けています。
この怪しげな国境は、人びとが自分がどこにいるのかを自分で確かめたとき、はじめてその存在を知ることができるのですが、さて、スマホ片手にさ迷い歩く人たちのうち、自分の位置、住んでいる国をはっきりつかんでいる人はどのくらいいるのでしょうか。