社会のあらゆる場でアピールはだいじな手法です。
ところが、アピールに一所懸命のあまり、手法であることが忘れられ、目的のようになってくると、だんだん滑稽に見えてきます。
ややおつむの弱いスポーツ選手がマイクを向けられたときにも、ときどきそれが口に出てしまいます。
横綱が賞金の束を受け取ってから土俵の上で振ってみせるのも、アピール癖の醜いところです。
アピールの習慣は、だんだん性格のようにもなっていき、サポート窓口の電話にも現れます。
「別のものが担当いたしますので、一度保留にさせていただきます」
相手がどうしたらよいのかよりも、私はこれから何をしますと、アピールが先になります。
聞かされたほうは「保留」の意味が、通話中として回線接続を保留にしておくのか、問題一時棚上げで保留にしておくのか、一瞬の解釈に迷います。
「このまま待ってればいいの?」
「はい、そのまましばらくお待ちください」
はじめからそう言えばいいのに。