僕は小さな窓から、大きな世界を見ていることに気付いていなかった。
流れる雲と同じように、山や木々も流れ去るものだと想っていた。
全ては動き、全ては流れ、全てが落着くことは無い。
大きなカーブに差し掛かって、自分の体が揺れた時、それは突然にやってきた。
気分が悪くなったのだ。
じっと流れ去るものを見ているだけの自分が、なにかとても気持ち悪くなった。
僕は小さな窓を閉じることに決めた。
しかし窓は閉まらない。
窓は最初から閉まっていたのだ。
それは本当は大きな窓であった。
知らなかった。
流れているのは、僕の見ている世界ではなく、僕自身であることを。
気付かなかった。車に酔ったのか酒に酔ったのか。