毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

日本語学科3年生は俵万智が好き    2010/12/13  No.26

2010-12-13 20:20:09 | 中国事情
 今日の日本文学は「短歌」「和歌」を紹介した。

「短歌」「和歌」ともに、日本の中学校の教科書に載っているものから有名なもの+自分の好みをちょっぴり加味してピックアップしたものだ。次のようなラインナップ。

Ⅰ:短歌5首
 ①いちはつの花さきいでて我目には今年ばかりの春ゆかんとす(正岡子規)

 ②列車にて遠く見ている向日葵は少年の振る帽子のごとし(寺山修司)

 ③白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ(若山牧水)

 ④みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただに急げる(斎藤茂吉)

 ⑤「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ(俵万智)


 ①では正岡子規は死期が近いとか言っても、やはりあまり通じなかった。言わなきゃ良かった。お気に入り0人。

 ②故郷青森から上京する、ぼくとつな青森弁を話す卓越した感性の歌人寺山修司が、向日葵=少年期の自分に別れを告げ、東京に行く=人生の旅路に向かうといったマイイメージを述べ、故郷の駅から江西省南昌の大学に出てきたときの自分に引きつけて感じることもできるのでは?などと雄弁に解説した。頷いてくれたのは1人だけだった…。

 ③中学校の時、国語の先生が歌ってくれたのを思い出し、私も真似して歌った。一度聞いただけだったのに鮮明に覚えていたのは、牧水の浪漫的な短歌とメロディが中学生の乙女の心にすっと入ったのかも知れない。今日も数名がお気に入りとして手を挙げた。

 ④斎藤茂吉が東大医学部出身と聞いてどよめきが起きた。東大は中国でも有名だった。立派な医者であるにもかかわらず自分の母親を見とれないかも知れない状況で、母の家に必死に急ぐ茂吉の姿は身につまされる。私は立派でもなく、もちろん医者でもないが、母を見とることができなかった…。これも数名がお気に入りに選んだ。

 ⑤これを読んだとき教室内で、隣同士「寒いね」「うん、寒いね」などとあちこちで俵さんの真似する子達が。男同士なのに…。俵万智さんが公立学校の教師でありつつ、「サラダ記念日」で爽やかに大胆に自分の恋を歌い上げたことを伝えると、賞賛ぽい声が上がった。もう、中国と日本の違いは全く感じることができない授業になった。


Ⅱ:和歌…万葉集より5首
 ①春過ぎて夏来たるらし白たへの衣ほしたり天の香具山(持統天皇)

 ②銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも(山上憶良)

 ③あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに(大津皇子)

 ④我を待つと君が濡れけむあしひきの山のしずくにならましものを(石川郎女)

 ⑤父母が頭かきなで幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる(防人の歌)

 「意味が分からない。」など言いつつも、人気投票してみると、③④の相聞歌に支持が集中した。①爽やかな夏の到来には1票。②親子の絆というかちょっと説教臭い感じの歌に1票。③④は、やはり若者たち。圧倒的共感。大津皇子が持統天皇に殺されて23歳で若き命を終えたことなども支持票を増やしたのかも。この時代は通い婚が一般的で、大津皇子も石川郎女さんのところに通っていたそうだ、と昨日調べたことを言うと、その通い婚制度には興味津津な表情だった。⑤名も無き兵士の歌も数人の票を得た。

 和歌を紹介するために、自分でも何回も声に出して読んだり、歌の背景を調べたりした。それにしても、千年以上の歴史を持つこれらの歌の何と豊かな表現であることよ!くるくる。(舌を巻く音)
 学生達の中に、中国古代の漢詩が好きな子が何人もいることが分かったのも、嬉しいことだった。

コメント
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