安倍首相の「施政方針演説」(2/28)をネットニュースで見て
保存したが、読むと心底クサクサしてくる。
「安全を確認した」原発再稼働を明言し、
TPPはアメリカの要請に応えて限りなく参加に近づき、
米軍普天間飛行場移設の早期実現をうたい・・・、と
何もかもアメリカに叩頭し従うこの卑屈極まる属国主義に対して、
なぜ日本の「愛国者」たちはいつものように汚い言葉で罵らないのか、
たいへん不思議である。
また、別のニュースでは
脱原発の考えを翻した人々が急に増えたそうである。
どうしてこの国の人々はこのようにコロコロ目先のことで
考えを変えるのか。
これはもう、ほとんど病気と言えるのでは?
そんな私の疑問に、
内田樹の文がかゆいところに手が届くように答えてくれた。
彼のブログ「内田樹の研究室」
2013年01月24日のページ、
彼の書籍「14歳の子を持つ親たちへ」韓国語版への序文の一部である。
以下抜粋。
―――――――――
本についてひとことだけ。
この本は精神科医の名越康文先生との対談を収めたものです。
対談が行われたのは8年前、僕はまだ大学に勤めていましたし、
名越先生はクリニックで思春期の子どもたちのカウンセリングをしていました。
教育と医療のそれぞれの現場での知見に基づいて、
「日本の家族」について、
いまどういう病的症状が出ているのか、
なぜそれが発症するに至ったのかについて意見の交換をしました。
最終的に二人が到達した結論は、
「日本人全体の心理的な未成熟がこれらすべての現象に共通する原因らしい」ということでした。
「心理的な病の理由は心理的な未成熟である」
というだけでは同語反復のようですけれど、微妙に違います。
「未成熟」は「病的」な様態をとることはありますけれど、
それ自体は病気ではありません。
成熟すればいいんですから。日本人に必要なのは
「治療」ではなくて「成熟」である、
というのがたぶんこの本から僕たちが引き出した実践的な結論ではなかったかと思います。
日本社会には人を成熟に導くための教育過程がない。
そのことを深刻な危機だと思っている人がほとんどいない。
ほんとうにいないのです。
少なくとも教育行政の当局者にはいません。
英語ができるようになれとか、
上司の言うことには黙って従えとか、
愛国心を持てとか、
体力をつけろとかいうことはがみがみ口やかましく言いますけれど、
「大人になれ」ということは言いません。一言も言いません。
「大人」というのは、ものごとを自分の個人的な基準に基づいて判断し、
その責任をひとりで引き受けることのできる人のことです。
でも、それだけではありません。
「大人じゃない人たち」の不始末や手抜きを黙って片付ける人のことです。
「子どもたち」よりも「大人」である分だけ「よけいな仕事」をしなければいけないということがわかっている人のことです。
そういう「大人」が一定数いないと共同体は長くは保ちません。
でも、そういう「大人」を育てるための教育システムが存在しないのです。
この本で僕と名越先生が話しているのは、
そのような危機的状況の諸相についての報告です。
そう思ってお読みいただければと思います。
14歳の子を持つ親たちへ (新潮新書): 内田 樹, 名越 康文: 本.価格:714円
保存したが、読むと心底クサクサしてくる。
「安全を確認した」原発再稼働を明言し、
TPPはアメリカの要請に応えて限りなく参加に近づき、
米軍普天間飛行場移設の早期実現をうたい・・・、と
何もかもアメリカに叩頭し従うこの卑屈極まる属国主義に対して、
なぜ日本の「愛国者」たちはいつものように汚い言葉で罵らないのか、
たいへん不思議である。
また、別のニュースでは
脱原発の考えを翻した人々が急に増えたそうである。
どうしてこの国の人々はこのようにコロコロ目先のことで
考えを変えるのか。
これはもう、ほとんど病気と言えるのでは?
そんな私の疑問に、
内田樹の文がかゆいところに手が届くように答えてくれた。
彼のブログ「内田樹の研究室」
2013年01月24日のページ、
彼の書籍「14歳の子を持つ親たちへ」韓国語版への序文の一部である。
以下抜粋。
―――――――――
本についてひとことだけ。
この本は精神科医の名越康文先生との対談を収めたものです。
対談が行われたのは8年前、僕はまだ大学に勤めていましたし、
名越先生はクリニックで思春期の子どもたちのカウンセリングをしていました。
教育と医療のそれぞれの現場での知見に基づいて、
「日本の家族」について、
いまどういう病的症状が出ているのか、
なぜそれが発症するに至ったのかについて意見の交換をしました。
最終的に二人が到達した結論は、
「日本人全体の心理的な未成熟がこれらすべての現象に共通する原因らしい」ということでした。
「心理的な病の理由は心理的な未成熟である」
というだけでは同語反復のようですけれど、微妙に違います。
「未成熟」は「病的」な様態をとることはありますけれど、
それ自体は病気ではありません。
成熟すればいいんですから。日本人に必要なのは
「治療」ではなくて「成熟」である、
というのがたぶんこの本から僕たちが引き出した実践的な結論ではなかったかと思います。
日本社会には人を成熟に導くための教育過程がない。
そのことを深刻な危機だと思っている人がほとんどいない。
ほんとうにいないのです。
少なくとも教育行政の当局者にはいません。
英語ができるようになれとか、
上司の言うことには黙って従えとか、
愛国心を持てとか、
体力をつけろとかいうことはがみがみ口やかましく言いますけれど、
「大人になれ」ということは言いません。一言も言いません。
「大人」というのは、ものごとを自分の個人的な基準に基づいて判断し、
その責任をひとりで引き受けることのできる人のことです。
でも、それだけではありません。
「大人じゃない人たち」の不始末や手抜きを黙って片付ける人のことです。
「子どもたち」よりも「大人」である分だけ「よけいな仕事」をしなければいけないということがわかっている人のことです。
そういう「大人」が一定数いないと共同体は長くは保ちません。
でも、そういう「大人」を育てるための教育システムが存在しないのです。
この本で僕と名越先生が話しているのは、
そのような危機的状況の諸相についての報告です。
そう思ってお読みいただければと思います。
14歳の子を持つ親たちへ (新潮新書): 内田 樹, 名越 康文: 本.価格:714円