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イスパハンのチーズケーキ cheese cake ispahan





冷蔵庫の奥に賞味期限が間近のクリームチーズが鎮座していたので、ピエール・エルメ御大のレシピブックから「イスパハンのチーズケーキ」Cheese Cake Ispahanを作ってみた。


このレシピブック、夫がくれた時は、さすが男性の選択である、美しいが難度が高く、しかもフランス語なのでめんどくさい、眺めるだけの非実用的な本だと思った。

が、なんと、もうすでにイスパハン、イスパハンのパリ–ブレスト、イスパハンのマドレーヌ、今回チーズケーキ...と順調に意欲を刺激されている。
不思議な魔法の本である。

わたしが薔薇色のイスパハンにこだわっているのは薔薇が好きだからだけではなく、9週間もの長い隔離生活で、生命力の象徴カラーのお菓子をサバイバル本能が欲しているからだと思う(知らんけど)。


先日ヨタヨタながら作ったイスパハンやイスパハン ・パリ-ブレストは、絞り出しひとつにしても高い技術が要求されるお菓子だった。
準備にもものすごく時間がかかる。イスパハンのマカロンなどは5日前から卵白を用意せよ(コシをとるため)と指令が飛ぶ。

だが、チーズケーキは工程がものすごく多いことと、休ませる時間が長いことを除けば比較的簡単だった。

台になるビスケットにバターを混ぜて焼き、休ませる
フィンガー・ビスケットを焼いてフランボワーズのソースを染み込ませて敷き詰め、冷やす
ゆるいベイクドチーズケーキ液を流して焼き、熱を取ったら冷蔵庫で冷やしてから冷凍庫へ
フランボワーズとライチを挟んで、レアチーズケーキの液を流し入れて、冷蔵庫で冷やしてから冷凍庫へ
型を外してフランボワーズのジュレを流し込んで冷蔵庫で3時間は冷やす

まるでカノンのようではないか。

これでも前日にホワイトチョコレートをテンパリングして薄くし、側面に貼り付けるという工程を省略したんですよ...


同じ色の真紅の芍薬があまりにも大きく、花びらがぎっしりつまっていて、美しく、芳しく、完全に幻惑されている。


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ブルージュはロマンティック?





先日、わたしも好んで使う「ロマンティック」という大衆的な言葉の意味は何なのかと考えてみた

「ロマンティック」は恋愛や旅情、夢や想像、感受性を重視し、個人の独自性を賛美する。
19世紀の産業革命の発展と個人主義から生まれた「手の届かないものへの思慕、憧憬」などと切り離せない感情なのだろうと。


ところで、「ロマンティックな街」検索の一番上に出てくる例えばこちらの記事では、ブルージュがパリと並んで世界で一番ロマンティックな街に数えられている。


ブルージュはロマンティックだ。
もしそうでなければ、世界の隅々から毎年多くの観光客を呼び寄せないはずがない。

わたしはブルージュに13年間住んだので、あの中世の街に現実感を抱いているものの、理解できないわけではない。


ブルージュがロマンティックなのは、もともと素地があったとはいえ、ブルージュが比較的最近になってからロマンティック風に造りあげられた街だからである。

当然といえば当然なのである。

以下、どういうことなのかを述べる。


13世紀から15世紀まではブルージュは比喩ぬきで、ヨーロッパ一栄えた都市であった。
交易と金融が繁栄し、宮廷が置かれた。
結果として優れた建築物が造られ、芸術が花開いた。

その後、運河が使用できなくなったため徐々に衰退、中世の面影を残したままで歴史の表舞台から姿を消す。

17世紀から18世紀にかけては新港を開拓したおかげで繁栄が一時期戻ってくるが、19世紀初頭、産業・経済の変化についていけなくなり、住民の4割が貧困層を形成するまでに落ち込んでいく。

経済的にぼろぼろになったブルージュに、19世紀の半ばごろ移住して来た人たちがいた。

ゴシックに魅了された懐古趣味の英国人たちである。
ヨーロッパでは長らく辺境の国だった英国がすっかり覇権国家に成長していたのである。
彼らは18世紀以降の啓蒙思想(理性)、その反動のゴシック趣味(感性)を併せ持っていた。


彼らは初期フランドル派の絵画やゴシック建築を再評価し、展覧会「ブルージュの初期フランドルは絵画展1902年」を開催するまでになる。

実際、このときに修復されたり、再建されたネオ・ゴシック様式の建築(例えばマルクト広場の州庁舎など。上写真の白い壁の建物)が、実はブルージュのあの雰囲気をかもしだすのに一役買っているのだ。
州庁舎の建物、建築された19世紀当時はふさわしくないと非難轟々だったそう...

ブルージュは、豊かになった英国人が憧れ、失って懐かしんでいた中世ゴシックの街そのもの、ロマン、そのものであったのだ。


これがきっかけでブルージュは観光都市として再び復活するのである。

ロマンティックはブルージュでは飯のタネなのである。


以上、ブルージュのグルートゥス博物館Gruuthusemuseumの映像作品で習い覚えたことを参考にしました。
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赤の女王




昨日、再び夫が芍薬を買って来た。
5ポンドおまけしてもらったらしい。

先日のなかなか咲かないボルドーの芍薬は青みの強い赤、こちらはリップ・スティック・レッドともいうべき真紅の芍薬。蕾のサイズも一回り二回り大きく大輪だ。

今朝起きたら芳しく咲いていた。
美しすぎて取り乱してしまう。
ラフマニノフのピアノ・コンチェルト1番の出だしのような花だ。


そういえば、この色にそっくりのドレスを持っていた...

去年の冬、5月の旅先で着ようと思って買ったBrock Collection。

英仏の国境移動が可能になったら車を飛ばして大陸の南に行くのだ。


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イングランドで自給自足始め





英国の隔離生活も今日から9週間目を迎える。

今日からしばらく素晴らしい天気が続くようなので、昨日の夕暮れ、ついに自給自足を始めた。

なす?
きゅうり?

いいえ、

食用花!


去年のクリスマス用に買った時はすでに時期外れだったので今までとっておいたキット使用。

ケーキなどに花を飾りたいときは、ロンドンの百貨店セルフリッジの食料品売り場で求めるしかなかったのだが、今は当然休店中。

これでいつでも好きなだけ花を飾ることができる!


しばらくするとガラスのドーム内に水滴がつき、地球そのもののようで感動的だった。 
間もなくその水滴は雨を降らせるだろう。

まるで創世記で天地創造をしているような気持ちだ。


6種類の花、いつごろ食べられるだろうか。



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芍薬姫




買ってから2週間、硬いつぼみのままだったボルドー色の芍薬がいよいよほころび始めた。

さらなる日当たりを求めて温室に移動させた。


徐々に花びらが開いていく姿も美しいが、その香りたるや。

しかし少々手遅れで、20本のうち、半分はつぼみのまま枯れてしまいそうな予感...


英国での隔離生活も明日で9週間目。
花や樹木の成長や、庭を訪れる鳥や、生命力のあるものがとても気になるのである。
うちに小さい子供や動物がいたらなあ!!


解決したきっかけは、ご親切にKさんが

「芍薬の蕾が開かない時は、水で優しく洗って蜜をおとすと良い」

「水がついたところが茶色く変色しやすいので、キッチンペーパーか柔らかい紙で優しく水分をとっておく」

と教えてくださり、目からウロコが落ちる思いだった。

というのは、つぼみのまわりに粘度の高い蜜が琥珀のようにつき、その量たるや娘が「これ、普通なの?」と言うくらい。
わたしは、「(ケーキの)イスパハンの薔薇の花びらに飾られている露か蜜に見立てたグルコースの雫はリアリティのあるものなんだ!」と感動していたからである。

なるほど、庭で成長している芍薬は、蜜に蟻が集まり、たびたび雨のシャワーを受けているのでちゃんと咲くのだなと。

みなさま、ご存知でした??


近所の店では芍薬が余っているように売られているので、また買ってこよう...
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