PHP新書 『本の読み方』 。 最近、こうした本は一切読まなかったのですが、平野啓一郎氏が書いているということで興味を引かれて手にしました。
平野氏は、京都大学在学中に23歳で芥川賞を受賞。 良く知られているように、東筑高校の出身です。 当人が北九州市をどう思っているか別として、地元に残った人間として、私は故郷出身者贔屓になりがちです。
著者の告白から始まります。 実は、著者を含めて、著述者の多くは本を読むのは遅い、というのです。
過多と言える情報量の中で、速読でなければ時代に付いていけないと思われがちですが、ゆっくり味わって読むことで書物の価値を理解しよう、と言うのです。
旅行に例えて話しています。 訪れた町を1~2時間でザッと見て回るのと、滞在して丹念に歩いて回るのとでは、同じ場所に行ったといっても、理解の深さ・印象の強さ・得られた知識の量には、大きな違いがあります。 旅行は、行ったという事に意味があるのではなく、行って、どれくらいその土地の魅力を堪能できたかにある、と。
読書も同じ、と。 ある本を速読して、つまらなかったという感想を抱くのは、忙しない旅行者と同様。 楽しむことのできた様々な仕掛けや、意味深い一節、絶妙な表現などを、全て見落としてしまっているのでは?
「量」 の読書から 「質」 の読書への転換を著者は進めます。 一例として。 昔よりもはるかに容易に、はるかに多くの本を入手できるようになりました。 しかし、それで、かっての人間よりも知的な生活を送っているのでしょうか?
生涯に読破した本の冊数が少ないからといって、カントやヘーゲルを無知な人間と言う人は居まっせん。 音楽の世界でも同様です。 マイルス・デイヴィスは、子どもの頃にはレコードを3枚しか持っていなかったそうです。 バッハでもモーツアルトでも、彼らが生涯に聴くことの出来た曲数というのは、ごく限られたものだったでしょう。
かっての人間は、みんなスロー・リーダーでありスロー・リスナーだったのです。
恒常的な情報の過剰供給社会で、本当に読書を楽しむためには、「量」 の読書から 「質」 の読書へ、網羅型の読書から、選択的な読書へと発想を転換していこう、そう著者は訴えます。
私の読み方は、「続き」 で書いてみます。
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