3月25日、政府の地震調査委員会が、南西諸島周辺などでの海溝型地震に関する長期評価(第2版)を公表した。
同委員会は2004年に長期評価の初版を出していたが、2011年の東北太平洋沖地震を機に、今回、評価対象や地震規模を見直したのだ。
それによると、南西諸島周辺でM8級の巨大地震が起きる可能性があると指摘。特に初版では、与那国島周辺で M7.8程度の地震が今後30年以内に起きる確率 を「30%程度」としていたが、今回は、M 7~7.5 程度の地震が起きる確率を、今後30年 以内に「90%以上」と算出。また、 南西諸島北西沖でも、今後30年以内に「60%程度」の確率と評価した。
政府の地震調査委員会が当初の評価を見直し、南西諸島周辺でM8級の巨大地震が起きる可能性があると指摘したことは、辺野古新基地建設問題にとってもきわめて重要である。
(上と下は、2022年3月22日の沖縄タイムス)
辺野古新基地建設事業では中小規模の地震(震度4程度)を想定したレベル1の耐震性能で設計されている。しかし、大規模地震に対応するためには、レベル2で設計することが必要である。
国土交通省『空港土木施設設計要領(耐震設計編)』でも、「被災による修復が長期間にわたる可能性がある等、当該施設の被災によって、その影響が長期又は広範に及ぶ可能性がある場合においては、レベル2地震動に対する安全性についても確保する」とされているが(国内の主要13空港は、『あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大地震・津波発生の考慮が必要』として、すべてレベル2の耐震性が確保されている)、大量の燃料・危険物質を扱い、貴重な自然の大浦湾に造られる辺野古新基地は、当然、レベル2で設計しなければならない。
2013年の埋立承認申請の審査でも、県はこの点を問題としたが、防衛局は「港湾基準に準拠し、『緊急物資及び幹線貨物の輸送に資する岸壁等の耐震強化施設ではない』との判断に基づき、レベル1地震動により設計を行った」(県の4次質問に対する防衛局回答)と回答し、当時の仲井眞県政は、レベル1地震動のまま埋立を承認してしまった。
今回の設計変更申請の審査でも、防衛局は「使用者である米軍と調整の上、護岸等の設計対象地震動は、レベル1地震動と設定している」(『第5回技術検討会資料』P2)と回答し、土木工学の「有識者」を集めたという技術検討会でも「米軍が認めているのなら、レベル1で問題ない」(同議事録)と、内容の技術的審査をすることなくそのまま認めている。
この問題は、立石新潟大学名誉教授らの辺野古調査団等も再三、指摘してきた。しかし県は、当初申請でレベル1の設計を認めたのだから、変更申請で今さらそれを問題にはできないという事情もあったのだろう。「レベル2で設計しなおせ」という指示はできなかった。
しかし、今回は全く事情が異なる。民間からの指摘ではない。政府の地震調査委員会が以前の評価を見直し、南西諸島での巨大地震が発生する可能性が高いと判断したのだ。防衛局は当然、従来のレベル1の耐震設計を見直し、レベル2で設計しなおさなければならなくなったことはいうまでもない。
今回の地震調査委員会の評価見直しについては、新聞等でも大きく報道されているが、辺野古新基地建設事業と関連づけた論稿はまだないようだ。県は、この点について防衛局に質し、早急に必要な対応を講じなければならない。
変更申請不承認理由の追加で済まされる問題ではない。それこそ埋立承認の撤回にもつながる重要な問題であろう。