遺骨混りの沖縄南部地区の土砂を辺野古埋立に使わないことを求めた具志堅隆松さんのハンストは2日目に入った。
具志堅さんたち8名が県庁前広場のテントで夜を過ごした。昨日とはうって変わって肌寒い日となったが、具志堅さんはまだまだ元気いっぱいで心配はなさそうだ。今日も朝から大勢の人たちが座込みテントに集まり、具志堅さんを激励した。
具志堅さんは、県に話し合いを求めているのだが、県は、「少し待ってください。県の方から連絡します」と言うだけで、今日も何の連絡もない。知事が県議会で「県民の心を深く傷つける。到底、容認できない」と言明したのだから、その具体的な方針を早急に示さなければならない。
(昼休み集会。今日も具志堅さんは知事室に向かって訴えた)
(今日も大勢の人たちが県庁前広場に集まった)
(知花昌一さんもハンストに合流)
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今日、沖縄平和市民連絡会は、この問題について県議会に陳情書を提出した。以下、全文を掲載する。3月17日の土木環境委員会で審議される。
沖縄県議会議長様
糸満市・「魂魄の塔」近くでの土砂採取の中止を求める陳情
沖縄平和市民連絡会
代表世話人: 高里 鈴代 宮城 恵美子
真喜志 好一 松田 寛
沖縄防衛局が辺野古新基地建設事業の設計概要変更申請書を提出し、辺野古埋立のための土砂採取地が沖縄県内全域に広がることが明かになりました。特に、南部地域(糸満市・八重瀬町)からは、県内全域の調達可能量の7割、埋立に必要な量の2倍もの大量の土砂調達が可能とされています。
しかし、南部地域一帯は、先の大戦で多くの県民が犠牲となったところで、今も多くの遺骨が残されています。戦没者の遺骨が混り、血が染み込んだ南部地域の土砂を軍事基地建設に使うことは、戦没者を冒涜するものです。
糸満市・魂魄の塔横の斜面(熊野鉱山)では、昨年、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」による遺骨収集作業が行われていましたが、突然、自然公園法、森林法、農地法に違反した開発行為が始まりました。そのため、沖縄県は昨年11月、自然公園法にもとづき工事の中止を指示しました。
ところが、昨年末、業者から自然公園法の開発の届出書が糸満市に提出され、糸満市は本年1月18日、意見書を付して届出書を県に送付しました。
この一帯は、自然公園法に基づき、沖縄戦跡国定公園に指定されています。沖縄戦跡国定公園の趣旨は、「第2次大戦における日米両国の激戦地として知られている本島南部の戦跡を保護することにより、戦争の悲惨さ、平和の尊さを認識し、20万余りの戦没者の霊を慰める」ために制定された」とされています(沖縄県自然保護課のホームページより)。戦跡としての性格をもつ国定公園としては、全国でも唯一のものです。
自然公園法では開発行為をするためには、特別地域は知事の「許可」が必要ですが、熊野鉱山付近は普通地域で知事への「届出」とされています。しかし、国定公園の場合、普通地域であっても知事は、自然公園法第33条2項にもとづき、風景を保護するために当該行為の禁止を命じる強い権限を持っています(下記(注)参照)。しかし知事のこの措置命令は、受理から30日の間しか行使できません。その意味でも、事態は急を要しています。
(注)自然公園法第33条2項 「知事は国定公園について、当該公園の風景を保護するために必要があると認めるときは、普通地域内において---その風景を保護するために必要な限度において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置を執るべき旨を命ずることができる」
糸満市は、県に提出した意見書で、「国道から平和創造の森公園方向の眺望は、緑のつながりが織りなす稜線となっており、地域資源の一つであるが、大規模な採掘により、この稜線に著しい改変が生じてしまい、眺望も著しく損なわれる懸念がぬぐえない」、「届出地は慰霊塔である魂魄の塔等の戦跡の周辺に位置しており、また、海岸線に連なる緑の風景が形成されている場所であるため、こういった米須地域らしい風景が損なわれることへの懸念がある」、「届出地周辺には慰霊塔などもあり、来訪者も多い。そのため、戦跡等とともに、斜面緑地も、歴史の風景として保全を図る必要がある」、「届出地は風景の保護の必要性が高いため、自然公園法33条2項に基づく措置命令を検討すべきである」として、この付近の風景保護の重要性を強調しています。
現地は米須霊域の魂魄の塔、東京の塔、シーガーアブ(有川中将以下将兵自決の壕。戦争当時、避難していた7家族が米軍に焼き殺されたという証言もある)等の戦争遺跡に隣接しており、土砂採取による影響も危惧されます。魂魄の塔近くの道路に土砂を満載したダンプトラックがあふれることなど認められません。また熊野鉱山は、平地ではなく斜面を掘削するのですから、遠くからも目立ち、周辺の「緑のつながりが織りなす豊かな風景」(糸満市米須集落景観形成重点地区)は、著しく破壊されてしまいます。
沖縄戦跡国定公園としての風景を保護するためにも、知事は自然公園法に基づき、熊野鉱山の開発行為を禁止すべきです。そして一帯を、平和学習と慰霊の場として生かすよう提案します。
この問題について、下記のとおり陳情します。
記
1.沖縄県の南部地区は、先の大戦で多くの県民が犠牲になり、今も多くの遺骨が残されている。戦没者の血が染み込み、遺骨が混じった土砂を新たな軍事基地建設に使うことは、戦没者を冒瀆するものである。
現在、魂魄の塔横の熊野鉱山の自然公園法にもとづく開発届が県に提出されている。この問題について知事は、2月26日の県議会で、「当該地域の土砂が辺野古埋立に使われることは、悲惨な戦争を体験し、多くの犠牲者を出した県民の心を深く傷つけるものであり、とうてい認められない」と表明した。
そのような立場に立つのなら、熊野鉱山の開発届に対してどう対応するのか、明らかにすること。
2.県は2月末から、熊野鉱山での遺骨収集作業に着手した。今後の遺骨収集作業の予定を説明すること。
ひととおりの遺骨収集作業を行ったとしても、小さな骨はどうしても取り残されてしまう。遺骨収集作業が終わったとして鉱山開発が始まれば、県の遺骨収集作業は結果として業者に協力したものとなってしまう。遺骨収集作業が終わったとしても熊野鉱山の開発を認めないこと。
3.熊野鉱山周辺は、戦没者の霊を慰めるために制定された沖縄戦跡国定公園に指定されている。糸満市も県に提出した「調書」(「意見書」)に明記したように、一帯は、「緑のつながりが織りなす豊かな風景」が続いており、しかも魂魄の塔、東京の塔、シーガーアブ等の戦跡にも近く、「歴史の風景として保全を図る必要がある」地域である。
自然公園法第33条2項の「風景の保護」には、単なる景観としての風景だけではなく、こうした「歴史の風景」も含まれる。知事は、同法にもとづき、一帯の風景を保護するために熊野鉱山の開発行為の禁止を命じること。